中村獅童が初音ミクと宙乗りみせるか
? “使命”と意気込む『八月南座超
歌舞伎』 製作発表会見レポート

昨年11月に新開場した京都の南座。“南座新開場記念”として多彩な公演を上演してきたが、今年8月、ICT技術を駆使した歌舞伎『八月南座超歌舞伎』が上演されることになった。2019年5月23日、製作発表会見が行われ、主演の中村獅童ほか、出演する澤村國矢らが意気込みを語った。
【超歌舞伎とは…】
2016年より松竹とドワンゴが共同製作し、「ニコニコ超会議」(※)の中で公演を重ねてきた全く新しい歌舞伎公演。日本の伝統芸能を代表する“歌舞伎”と、NTTの研究所が研究開発を進めてきた超高臨場感通信技術「Kirari!」をはじめとする、最新テクノロジーが融合し、エンタテイメントの限りない可能性を切り拓いてきた。
「超歌舞伎」の大きな見どころは、歌舞伎がバーチャルシンガーとコラボレーションするという夢の空間をNTTの最新技術を駆使して創り出すこと。さらに、通常の歌舞伎公演とは異なり、観客参加型の演出も見どころの一つ。ペンライト(サイリウム)を振って演出に参加することができ、舞台と客席が一体化した空間を体感できる。
また、客が自由にかけることができる“大向う”も見どころ。中村獅童一門の屋号“萬屋”、初音ミクは“初音屋”、澤村國矢は“紀伊國屋”。さらにNTTの“電話屋”などをはじめ、“待ってました!”など誰もが気軽に書けることができる。
※ニコニコ超会議…ドワンゴが「ニコニコの全て(だいたい)を地上に再現する」をコンセプトに2012年より8年連続で開催している巨大イベント。ニコニコ動画やニコニコ生放送で親しまれているコンテンツをブーストして展開し、ネットの世界を実際に体験共有できる場を提供している。今年2019年も4月27、28日に開催され、来場者数は過去最高の16万8248人を動員。ネット視聴者は666万人3612人を記録した。
松竹の安孫子正副社長、澤村國矢、中村獅童、NTTの川添雄彦取締役研究企画部門長(左から)

今回初めて南座で開催される「超歌舞伎」。本公演は、超歌舞伎を初めて見る観客も安心の「超歌舞伎のみかた」から始まり、中村獅童と初音ミクによる新作舞踊「當世流歌舞伎踊」、そして宙乗りなど新たな演出も加わった「今昔饗宴千本桜」の3本立てだ。通常公演に加えて、別配役のリミテッドバージョン(全8公演)も上演され、「超歌舞伎」初演時より敵役としてお馴染みの澤村國矢が初音ミクの相手役を勤めることになっている。 
中村獅童「歌舞伎を見たことがない若者を振り向かせることが、“使命”」
中村獅童
「超歌舞伎」初演より主演を務める中村獅童は「歌舞伎の聖地でもある京都南座で、こうした新しい芝居をできることを嬉しく思っています」とまず話す。
 
絵本を題材にした『あらしのよるに』という新作歌舞伎の初演も南座だったことに触れつつ、「今度はデジタルとの融合である超歌舞伎を南座でできることを嬉しく思っておりますし、歌舞伎を見たことがない若者を振り向かせることが中村獅童の使命だと思っております。伝統を守りつつ、革新を追求するというスタイルをこれからも貫き通したいです」と決意を語った。
「サブカルチャーが好きで、今まで歌舞伎を見たことのないような若者と触れ合うことができて。いつの間にかみんなも“大向う”もだんだん上手になってきて。出演者として出ている方も感動して、最後は涙涙で何とも言えない感動がある。毎年毎年燃え尽きます。その感動を再び、京都南座でつくることができたら」ともまっすぐに話した。
澤村國矢「プレッシャーもあるが、全身全霊で取り組みたい」
澤村國矢
リミテッドバージョンで主演を務める澤村國矢は「新しい京都南座は初めて行かせていただきますし、1ヶ月という超歌舞伎がどのようになるのか楽しみであると同時に、リミテッドバージョンで、今まで獅童さんが主演なさったお役を築いていかなければいけないというプレッシャーに今から押し潰されそうでございます。皆様のお力をお借りして、1ヶ月を乗り切りたいと思います。全身全霊で取り組んでまいります」とコメントした。
松竹の安孫子正副社長
松竹の安孫子正・副社長は「歌舞伎の古典をどう継承していくか。先人が作り上げた歌舞伎をどうやって後世に伝えていくか。それが一つ目の大事なことでございますが、それともう一つ、その時代時代にどういう風に新しい歌舞伎を作っていくか。この二つが永遠のテーマになっております」と挨拶。
その上で「松竹の歌舞伎とNTT様のテクノロジー技術を掛け合わせた新しいパフォーマンスができないかということがございまして、数年前から打ち合わせをして、準備をしてまいりました。そして、2016年にニコニコ超会議で超歌舞伎の第1回を実現することができました」とこれまでの経緯を解説。
「歌舞伎と無縁だった大勢のお客様がいらっしゃいました。本当に大きな歓声をいただいて、それが私どもの励みになって、さらにいいものを作っていこうということで公演を行なってまいりました。私たちの力だけではできなくて、やはりNTT様の持っている技術があればこそ、超歌舞伎を実現することができました」。
 
「(南座は)ナイトエンターテインメントを心がけて1年間の運営をしております。今までの歌舞伎のファンの方、これから歌舞伎を初めて見ていただく方、外国の方、いろんな方を対象にした、総合的なパフォーマンスでございます。歌舞伎と新しい技術が融合したパフォーマンスを、ぜひ皆様にお楽しみいただきたいと思います」とも語った。
NTTの川添雄彦取締役研究企画部門長
NTTの川添雄彦・取締役研究企画部門長は「我々は、まるでその場にいるような感覚や感動を離れた場所でも感じることができるような技術をぜひ実現したいと思っています。ただ、こういう技術があるだけではだめで、コラボレーションを無くしては、皆様に見せることができないと感じておりました」と話す。
 
「松竹様がインバウンドのお客様や今まで歌舞伎に触れてこなかった若い人たちにも歌舞伎の面白さをご理解いただくということを求めておられることを知りまして、ぜひご一緒させていただくと素晴らしいものができるのではないかということで、超歌舞伎を3年間商業公演として上演してきました」と思いを熱く語る。
 
「超歌舞伎の中では、実は最初のころは、技術がこなれた点がなかったものですから、ご不自由をおかけしましたが、よく技術を理解した上でご利用いただき、皆様にICTと歌舞伎はマッチするのだということを知っていただきました」
 
「ぜひ日本最古の南座で、我々が新しいICTの技術を活用した公演を見せていただけることは、貴重な機会だと思っています。さらにこの技術を進化させて、より楽しいもの、感動できるものを一緒に作っていくことができたら幸いでございます。まだまだ技術は進化しますし、それに合わせて歌舞伎もどんどん歌舞いていくんだと思います。ぜひご期待いただきたい」と挨拶した。
初音ミクさんと宙乗りがしたいと説得中です(笑)
中村獅童と澤村國矢(右から)
続いて、中村獅童へ質疑応答が行われた。
ーー普段歌舞伎座にいらっしゃらない方でも、ニコニコ超会議で超歌舞伎をご覧になった方が多くいらっしゃいました。また、会場には行けなくてもコメントという形での反応もありました。どのような反応や手応えを感じていらっしゃるか、教えてください。
獅童:出番の前は袖でスクリーンを見ているのですが、初演の時になかったことが起きている場面としては、歌舞伎独特のちょっと分かりにくい言葉が出てきた時に、生放送で歌舞伎通の方なのでしょうね、こういう意味だよという解説が入ったりして。若い人と歌舞伎通の人が交流をしているのを見ているのはとても微笑ましいですし、ついに親切な人たちが参加してくれるようになったんだと。コメント、面白いですよね。
 
生放送で「盛り上がっているかー?」と聞くと、「8888(パチパチ)」と画面が真っ白になるぐらいコメントがついて。なかなかできないことなので、やっている僕も楽しいです。
ーー超歌舞伎としては4回目ですが、今回は初の劇場バージョンということで、何か新しい試みはあるのでしょうか?
獅童:やりたいことはたくさんあるんですよ。やっぱり歌舞伎専門の劇場ですから。あまり言えないのですが、希望はいっぱい言っています(笑)。初音ミクさんと宙乗りをしたいな……なんて言っているのですが、女性なのでね。なかなか宙乗り大変なので、ミクさんが「宙乗りが嫌だ」と仰ったらできないので、なんとか今説得しているところなんですけど……ご本人のお返事待ちです(笑)
ーー結局、一人で宙乗りはやるのですか?
 
獅童:一人でやるより、ミクさんと一緒にやりたいので。昨日もちょっと電話して説得したんですけど、なかなかいいお返事をもらえなくて(笑)。今は、踊りのお稽古を一生懸命なされているみたい。歌舞伎の経験がないのに、踊りも大変に上達なさっている。負けないように僕も一生懸命やっていきたいです。
澤村國矢
ーー2016年から回数を重ねられて、内容面で進化しているなと感じられていることは?
 
獅童:一番最初はデジタルと我々アナログの融合ということで、大変に稽古も時間がかかって手探り状態だったのですが、回を重ねるごとにデジタルも進歩してますし、第1回があったからこそ第2回があって……。伝統や型があるからこそ、新しいことができるということを感じます。歌舞伎のお化粧法や衣装の艶やかな色彩美など、普段当たり前のようにやっていることを毎回毎回再発見できる。
 
技術がないと成立しない舞台ですし、技術がどんどん発達しているので、NTT様様ですね。南座は歌舞伎専門の舞台になりますから、今までの超会議とは違った、さらに進化したお芝居がお見せできるのではないかなと思います。
 
ーーインバウンドを意識されているということがお話でありました。言葉の壁がある外国の方にどのように楽しんでいほしいか、一番の見どころを教えてください。
 
獅童:話が重複してしまうかもしれませんが、やはり歌舞伎という日本の伝統芸能とデジタルの融合がテーマですから、一番感じていただきたいです。歌舞伎ならではの色彩美は、デジタルでもすごくこだわっています。日本特有の伝統色、歌舞伎のお化粧法は歌舞伎ならではの表現方法ですから、それを感じていだたきたいと思いますね。
 
エンターテインメントなので、とにかく楽しんでいただいて。お客様参加型の演目だと思いますので、ぜひ騒いでいただきたいな、盛り上がっていただきたいなと思います。
中村獅童
ーーお稽古で一番ご苦労されていることと「千本桜」で一番好きなシーンはどこですか?
獅童:お稽古はデジタル……やはり、最初はミクさんとセリフのきっかけですよね。間を合わせるのが大変でした。あと、初演の時は舞台稽古までなかなかデジタルと合わせることができなかったので、明け方までスタッフも出演者もみんなで一生懸命で作りました。
 
通常の歌舞伎ですと、女性は出ないので、女性である初音ミクさんと踊ったり、セリフの掛け合いは毎回楽しいです。とにかく踊りに関しては上達されているんですよね。世界中の人を魅了する裏で、並並ならぬご努力があるんだなということを我々もお姿を拝見していて。見習わなくてはいけないし、我々もみんなミクさんにメロメロになっています。どの場面が好きというよりも、共演させていただけることが嬉しいですし、楽しみです。
母からの置き手紙を思い出して……言葉に詰まる獅童。
ーー改めて南座は獅童さんにとってどういう劇場ですか?
獅童:南座は本当に思い出がいっぱいございます。やはり12月の顔見世ですよね。25、26歳のとき、若手の頃に出演させていただいて、まだまだお役に恵まれない時期にも、顔見世で一役だけ、本当に出番も短くて、10分ぐらい出させていただいたことがありました。宿泊しているホテルに帰ったら……母が手紙を書いていてくれて......「あなたは大丈夫、絶対に大丈夫。いつか立派な役者になれると私は思っている」といった内容の置き手紙をしてくれて。それから自分を信じて、未来を信じて、今日までやってきました。
 
私は母が京都出身なので、こういった新しい試みや挑戦がまた南座で、歌舞伎の劇場としての初演をやらせていただけることは本当に感慨深いものがありますね。何としてでも皆さまに喜んでいただけるような芝居を、みんなで力を合わせて作って、「またぜひ違う劇場でもやってくれ」と言っていただけたら嬉しいです。とにかく何はともあれ、今回の南座を成功させなくはいけないという思いでいっぱいです。
中村獅童と初音ミク
獅童:いつか真ん中に立てる役者になりたいと、誰でも思っていることだと思うんです。その中で「超歌舞伎」ができるのは嬉しいですし、國矢くんも若い時から一緒にやってきていますけど、サブカル好きの若者の間で國矢くんがブレイクしたことも嬉しいです。今度は同じ役もやりますから、ライバルですが。
 
彼は芝居が大好きで、真面目な男。お客さんへの煽りは僕は負ける気はしないんですけど(笑)、國矢くんがどうやってお客さんを煽るのか、ぜひこの目で確かめたいと思います。どんどん國矢くんみたいな素敵な役者さんがいることを知っていただきたいし、これを機にもっともっと注目してくださると、友達として嬉しいなと思いますね。
 
......僕も勘三郎のお兄さんに中村座の試演会で、勘三郎の兄さんが主役としてお務めされているお役を1日だけやらせていただいたりして、チャンスを兄さんから度々いただいていたもので。本当に國矢くんが主演を務めるのは、友達として本当に嬉しい。でも、何回も言うようですが、煽りは負けません(笑)
澤村國矢
ーー初音ミクさんはアジアツアーをされていますが、獅童さんとしては本公演の海外公演ということに関して、お考えがあありですか?
獅童:世界中で初音ミクさんは非常に人気がありますよね。去年の9月に中村七之助さんとパリで歌舞伎をやらせていただいたのですが、パリも初音ミクさんは有名で人気があるとのことですので、パリに行きたい。パリ。パリ行きたいですね(笑)。だけど、やっぱり南座をまずは成功させないといけないなと思います。でも......成功したら、パリ(笑)

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