劇団新派が山村美紗の傑作ミステリー
に挑む 『京都 都大路謎の花くらべ
』製作発表記者会見レポート
松竹では、平成18年9月南座にて上演されたほか、平成22年10月に第2段となる『京都 花灯路恋の輝き』が、平成27年10月には第1段をリニューアルした『京都 都大路迷宮の恋めぐり』が、物語の舞台である京都で上演されてきた。
今回は初の東京公演であると同時に、初の劇団新派版。近年、『黒蜥蜴』や『犬神家の一族』を劇化し好評を博している齋藤雅文が脚本・演出を担当し、劇団新派の波乃久里子、喜多村緑郎、河合雪之丞に、舞台・映像で幅広く活躍する中村梅雀、原作者・山村美紗の愛娘でシリーズ全てに出演している山村紅葉、ジャニーズの長谷川純というゲストを迎えたキャスト陣が挑む。
時代性や地域性と共に人間の心理を細やかに、そして描きながらも、密室殺人やどんでん返しを盛り込んだ見応えのある作品になっているとのこと。
脚本・演出:齋藤雅文
「ミステリーは大好きですが、大劇場で密室殺人はハードルが高い。ただ、山村先生の没後10年の追悼で書かせていただいた時、紅葉さんから山のような本をいただいて(笑)山村先生の作品の幅の広さと多さに圧倒されました。その中で、いいとこ取りをいたしました。歌も踊りもある楽しいエンターテインメントにして、心の動く情熱的な舞台にしたいと考えています。『疑心暗鬼を産む』という言葉が出てきますが、みんな疑わしい人ばかり。それぞれに殺人をする理由を作りましたので、楽しんでいただけたら」
「私は、来年で70年近く役者を やっていることになりますが、ミステリーもクラブのママも初めてでございます。それこそ疑心暗鬼ですが、なんとか夏の暑さを吹き飛ばすような素晴らしい舞台にしたいと思っていますのでご声援のほどよろしくお願いいたします」
「昨年の犬神家以来、新橋演舞場に戻ってくることができ、こんなに喜ばしいことはありません。また、梅雀さん・紅葉さんとご一緒できるのも嬉しいことです。長谷川純くんも、一度京都の時代劇でご一緒させてもらいまして、そのご縁で少年隊の東山さんに紹介していただき、一緒にフグを食べまして(笑)その席で非常に深く演劇論を語りあった好青年の純くんと、こんなに早くまた舞台でご一緒できるのは夢のようです。さっき齋藤さんが言ったように、誰が犯人かはわかりません。ミスリードをすべく、沢木役、必至に精進したいと思っています」
「この作品は、初演を客席から拝見しました。その時に、なんと面白いお芝居なんだろうと感激した覚えがあります。まさかその作品に自分が出られるとは思っていなかったので、今回本当に嬉しく思っています。こういうお芝居で女形が演じるというのもなかなかないことなので、ますます勉強していきたいと思っております」
長谷川純(IT企業社長・山田二郎役)
「今回、日本一歴史ある新派さんで、初めて大御所の皆さんとご一緒させていただくことに大変緊張しています。僕は、映像作品『渡る世間は鬼ばかり』で泉ピン子さんをはじめ、色々な方々とお芝居させていただきましたが、今回も演劇の大御所の方々ということで、近年で一番緊張しております。八月は山村先生の大人で上質な本格的サスペンス、ぜひ楽しんでいただきたいです」
山村紅葉(祇園芸妓・小春役)
「母の作品は、TV化された作品は多くありますが、舞台化されたものは生前は一つもありませんでした。なぜかというと、舞台はトリックの解明が非常に難しい。みんなが見ていて細工ができない中で、至近距離ではないところから見てもみんながわかるものでないといけない。でも逆を返せば、みなさんの目の前で解き明かされるという魅力があると思うんです。それから、母の作品は場面転換が非常に多く、舞台で表現するのは難しいんです。南座の時は、回る盆や花道、通路も使ってうまく展開していただきました。それと、舞台化の話は何回もあったんですが、揉めるのがキャスティング。「美男美女で書いてるから綺麗な人じゃないと嫌」だとか、「下手な人は嫌」とか、「ブサイクなの・下手なのは紅葉だけでいい」とか言って。今回、母の夢だった東京・新橋演舞場で、母も絶対納得する方々に出ていただけて本当に嬉しいです」
中村梅雀(狩矢警部役)
「久里子さんの70周年には及びませんが、私も今年54年になります。でも、実は初めて尽くしなんです。歴史ある新橋演舞場に立つのも初めて、山村美紗さんの作品に出るのも初めて、舞台で警部を演じるのも初めて。この謎が一つ解けたのが、山村先生は美男美女じゃないと出さないと。生きているうちは叶わなかったんだなぁとようやく謎が解けました(笑) 狩矢警部もこれまで美男子、背の高い方、演じられてる方何人も浮かんできますが、ここで私がきてしまったからには、私自身がトリックかもしれませんからね(笑) みなさんご期待ください」
この後行われた質疑応答では、まず、新派初の山村サスペンスということで、新派らしさをどういう部分で見せたいかという質問が。
山村は、「新派は母や祖母も大好きで、よく観に行っていたので、その方々が自分の作品を演じてくださることを母もすごく喜んでいると思います。やっと親孝行ができたなと、ずっとスネかじってコネ使いまくってきたので(笑)」と母との思い出を笑いを交えて語り、中村も「ずっと昔になりますが、祖父が出演した新派の舞台が今も目にハッキリと焼き付いています。当時、「ああ、おじいちゃん格好つけてるな」と思いました。私は格好つけない感じでいこうと思いますが、空気感にあって、より面白くなるよう、精一杯努めようと思います」と、意気込みを新たにしていた。
今作の舞台となる祇園では、節分の習わしである“お化け”が定着している。これは、芸妓さんや舞妓さんが一日限りの仮装をし、お世話になったお茶屋さんなどにお礼の挨拶をする風習のこと。今ではハロウィンのようなお祭りになっているこのイベントは、作中で事件現場となるクラブでも開催されるようだ。覆面や化粧で仮装をし、誰が誰かわからない混乱の中で事件が起きる、という流れらしい。
齋藤は「せっかく長谷川くんがくるから歌わせたいな」と話し、使いたい曲も既に決まっているとのこと。和物・洋物混ぜた歌と踊りを全員で4曲やるぞ! と宣言し、喜多村や水乃にも踊ってもらいたいと会見の場でオファーを出していた。極上のミステリーだけではなく、極上の歌と踊りにも期待したい。
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