17年目の『ボロフェスタ』に向けて 
主催の飯田仁一郎とセントチヒロ・チ
ッチ(BiSH)、共通の思いとは

2002年、京都インディーズシーンからスタートしたフェスティバル『ボロフェスタ』。アーティスト/バンドの有名・無名やジャンルを問わず、主催者が見たい、呼びたいと考えるバンド/アーティストを紹介し続けてきた、音楽好きから圧倒的な信頼を集めるフェスだ。今年、17年目を迎えるにあたり、改めて主催のLimited Express (has gone?)のリーダー/OTOTOY取締役・飯田仁一郎にこのフェスの成り立ちを聞くと共に、ジャンルを問わないこのフェスの意志を象徴する出演者の一つ、BiSHから、彼女自身、『ボロフェスタ』の出演バンドは自身の嗜好とも重なるというセントチヒロ・チッチとの対談を実施。今年の『ボロフェスタ』が目指すもの、チッチが共感するポイントなど、『ボロフェスタ』が唯一無二な理由が理解できるキーワードが続出した。
――あらゆるフェスの中でもオリジナリティを確立している『ボロフェスタ』ですが、まず成り立ちをお訊きしていいですか?
飯田仁一郎(以下、飯田):それこそチッチも好きなナンバーガールとかが出てきた時代です。その頃、京都からくるりが出て、くるりが出たことによって京都ムーブメントが起こったんです。で、くるり、キセルママスタジヲなどがメジャーのレコード会社と契約して、それによってみんな東京に行ったりして、そのあと京都には誰もいなくなったっていう時期があって。その頃は、僕のバンドのリミエキ(Limited Express(has gone?)) とか、主催メンバーのゆーきゃんとかが「よし、今度は僕らが頑張るぞ」と思ってたタイミングでもあったんです。また『FUJI ROCK FESTIVAL』(以下、フジロック)も始まって3年目ぐらいで、「京都で『フジロック』みたいなことを自分らの手でやれないか?」と思い始めたんです。それができれば、京都自体、もう一度注目してもらえるとも思ったので、『ボロフェスタ』をやろう!って、やり始めた感じですね。
――『フジロック』の黎明期を経験して、自分たちでもやってみたいと思った要素はなんですか?
飯田:逆に『フジロック』はバンドの規模がでかすぎたんですよ。Limited Express (has gone?)は出させてもらったことがあるけど、でも僕らの周りのバンドは出れたか?というとやっぱり出れなかったし。僕らが京都でやりたいことはこの大きいバンドたちのフェスじゃなくて、この“フェス”っていう開放的な空間をどうこっち側、つまり自分たちの周りのバンドや好きなアーティストにプラスになるような形でやるか?みたいなことを考えたんです。
――自分たちの周りのバンドや好きなアーティストとは?
飯田:僕は当時、TSUTAYA西院店にいて、Homecommingsのいるレーベル、Second Royalの小山内(信介)くんと一緒に働いていて。それにDJで今Mikikiで働いている田中亮太くんやゆーきゃんなども働いていた。みんなが集まってくるTSUTAYAがあったんですよ。そこにROTTENGRAFFTYが来てくれたりとか、ソウルフラワーユニオンの中川敬さんが「TSUTAYAやのに、面白いレコ屋あるぞ」みたいなことを言ってくれて。そこで得た情報とか、そこで得た“かっこいい”っていう感覚みたいなのを、『ボロフェスタ』ではずっとやり続けてる感じなんです。。
――現在のライブカルチャーのキーマンが揃ってますね。
飯田:僕の場合、それが地続きでOTOTOYになったので、一貫して、その頃“かっこいい”と思った感覚値を継いでいますし、OTOTOYをやる中で、WACKの渡辺(淳之介)さんとも出会ったんです。WACKからは最初はBiSに出てもらいましたけど、BiSに関してはBiSHよりもっとアイドル的なノリだったので、そういう人を入れてもハズさないみたいなところは大事にしています。
――BiSの出演は2011年ですね。その頃の機運はどんな感じだったんですか?
飯田:BiSを最初に入れた年には、やっぱりアイドルを入れるのはどうなのって風潮はあって。でもOTOTOYで紹介していたし、全然気にしなかった。それを叩く人はいたんですけど、そこに関してはやっぱりかっこいいと思うものを信じていれば、あんまりジャンルは関係ないなと思っていますね。
セントチヒロ・チッチ(BiSH)
BiSHはメンバーの嗜好もバラバラでも『ボロフェスタ』に立った時は一つになれてる気がするので、『ボロフェスタ』に恥じないライブをします。
――そして2015年からはBiSHも出演するようになって。最初に『ボロフェスタ』から声がかかった時、BiSH内はどうだったんですか?
セントチヒロ・チッチ(以下、チッチ):声をかけてもらった時は、まだ右も左もわからないころだったので、“フェスっていうものに出させてもらえるんだ”っていうことに一番メンバーがびっくりして。OTOTOYはBiSHの初期から飯田さんがインタビューをしてくれてるんですが、なんで私たちをインタビューしてくれてるんだろう?っていうくらい、本当に右も左もわかってなかったんです。でも渡辺さんから、「『ボロフェスタ』っていうすごく素敵なイベントに出るから頑張れよ」って言われて、「あ、がんばんなきゃいけないんだな」ってすごく感じて。でも初めて出演した時に、それこそBiSHの方向性もメンバーもバラバラな中、ここに立っている時だけは自分たちが一点を見つめることができたフェスだったんですよ。だから私は『ボロフェスタ』では毎年、大事に歌いたいなと思ってて。それに私が大好きな音楽がここにすごく集まってるなと感じるフェスで、それが唯一無二なんですよ。だからすごく好きなフェスですね。でも毎年、全然違う気持ちになります。
――1年目と2年目ではどう違いますか?
チッチ:1年目はほんとに初めてのことばかりで、気持ちが焦りすぎて情けない感じだったと思います(笑)。思い出せないぐらい恥ずかしい。まだBiSを追いかけてて、亡霊に取り憑かれているような(笑)。気持ちも毎日焦っていた時期だったので、その日その日が一生懸命って感じだったんですけど、2年目ぐらいからは“BiSHはBiSHだ”と思えるようになってきたので、『ボロフェスタ』で自分たちをどう表現できるかがとても大事になってきたんです。だから私が『ボロフェスタ』の良さをメンバーに語るみたいな(笑)。「素晴らしいフェスだから頑張ろうね」、みたいなことも話したりして。KBSホールにステンドグラスがあるんですけど、あそこでライブをしてる時に(幕が)わーって開くのがBiSHの夢でもあったので、3年目にそれを叶えさせてもらったときは、すごく嬉しかったです。
――『ボロフェスタ』に出ているバンド、アーティストはチッチさんの嗜好に近いところだと思うんですが。
チッチ:もともと、青春パンクのバンドが好きだったんですけど。『ボロフェスタ』とかでいろんな音楽に触れていく中で、もっと好きな音楽が増えて。で、飯田さんがかっこいいと思うバンドって、絶対かっこいいんですよ。「このバンド、めっちゃかっこええで」って教えてくれるから、それは絶対チェックするようにしてて。で、バレーボウイズを教えてもらった時、激ハマりして。ちょうど同じ日に出てたので、“わー!”って思って。いつも『ボロフェスタ』に早く入って、ライブを見るんですよ。
――チッチさんが自分でイベントをやりたいと思ったきっかけも『ボロフェスタ』?
チッチ:そうですね。BiSHはいろんなフェスに一昨年ぐらいから出させてもらって。たくさんのバンドさんと対バンさせてもらう中で、もどかしい思いとかを抱えたりもして、いろいろ経験させていただいて。でもたくさんのフェスの中でも『ボロフェスタ』はとにかく純粋にいい音楽を伝えようとしているなと思って、私も何かイベントをやりたいと思った時に、そういうマインドというか、自分が伝えたいものを伝えられるイベントをやりたいなっていうのは思っていて。で、『ボロフェスタ』の今年の「開催に寄せて」(https://borofesta.jp/about/)のコメントがすごい好きで。こういう人がいてよかったなと思って(笑)。
飯田仁一郎(Limited Express (has gone?)/OTOTOY取締役)
自分たちを信じよう、自分たちの周りで起こってること、どんだけメディアが煽っても、振り回されずにちゃんと自分たちを信じてほしい。
――「開催に寄せて」、今年は「SNSには気をつけよう」という書き出しから始まっていますね。
飯田:やっぱりSNSの動きを気にするんじゃなくて、僕らはリアルでありたいと思っています。フェスって実はメッセージを伝えやすいと思うんです。例えば、チッチが「私たちはこういう音楽と一緒にやりたい」と思って自分でイベントを作り実現することは、SNSで好きですって発言するのよりももっと強い意志になるんです。だから、開催のアティチュードを伝えるっていうのは重要なことやなと思っています。
――SNSはBiSHの活動とも密接に関係があると思いますが、何か思うところはありますか?
チッチ:私は実は今年の『ボロフェスタ』の「開催に寄せて」を読む前に作った歌詞があって。それを書いた時の気持ちと『開催に寄せて」がすごいリンクして。『STiCKS』っていうEPに入ってた曲で「FiNALLY」がそうなんです。テレビで一つのニュースが取り上げられたら、どこのチャンネルもその話ばかりなんですよ。もっと伝えなきゃいけないことがたくさんあるはずなのに、テレビはどうしてこういうことばっかりやるんだろう?って、もどかしくて。フラストレーションが私の中で溜まってしまって、SNSを開きたくないなって思う時期もあって。結局みんな、大きくリツイートとか“いいね”されたものに影響される。音楽も大多数がいいと言ったらいいとなっちゃう。そう思っちゃう時があって、ちょうどその時に「開催に寄せて」を読んで、やっぱりその場所にいることが大事だっていうのは、めっちゃ思ったんです。私はそれを大事にしてきたし、行きたいと思ったら行くし、見たいものがあったら見たいので、そういう人が増えたらいいなとずっと思っているんです。それを言葉にしてる『ボロフェスタ』はかっこいいなと思いました。
――そうですね。相当な覚悟で開催していることがわかりますから。自主企画の他にも、チッチさんはソロでGOING STEADY銀杏BOYZカバーをリーガルリリーのアレンジ・演奏でやってますね。
チッチ:ああ、はい。それは私が個人的にリーガルリリーが好きで、ライブに行って。たまたま友達の友達で紹介してもらえたんです。で、素直に「好きです」って言って。
飯田:(笑)。
チッチ:そしたら(たかはし)ほのかが「嬉しいです!」って(笑)。ほのかはほんとに純粋に素直に生きてる人なので、「一回話したいので二人で会いませんか?」って私から言って、二人で呑みに行って、そこで意気投合して仲良くなって。自分のソロが決まったのが、そのちょっとあとなんですよ。で、ソロをやるなら誰とやりたいか?って聞かれた時に、リーガルリリーとやりたいって。速攻連絡して「一緒にやってくれないか」っていうことを話したら、二つ返事でOKしてくれました。
――呆然としますよね、リーガルリリーのライブは。
チッチ:私は、ほのかはホワホワした女の子とだと思ってたんですけど、音楽が鳴り出した瞬間に裏切られた気持ちになって、そんな女の子を今まで見たことなくて。ほのかの声は唯一無二だと思うし、出会えてよかったと思うバンドです。
飯田:やっぱりリーガルリリーとかをちゃんと騒いでるのはチッチの世代なんです。リーガルリリーとか、それこそBiSHもちょっと上の世代からすると偏屈な目で見る人もいる。「イースタンユースやZAZEN BOYSがいればいいよ」とかで終わっちゃうのとは違うなと。チッチの世代が面白いと言ってるからには何か面白さがあるんだと思って聴いたりライブを見たりすると、共感を呼ぶところが不思議と見えてくるんです。僕はそういう目を閉ざさないようにしています。
セントチヒロ・チッチ(BiSH)、飯田仁一郎(Limited Express (has gone?)/OTOTOY取締役)
――話は変わるんですが、BiSHはフェスや対バンイベントのセットリストはメンバーで考えているとか。
チッチ:最近は7割ぐらい私がやってて。セトリにも人間が出るんですよ。6人全然、違って。自分がライブをする時に、どんな思いでこのセトリを組んだかを考えられるから、伝えられる思いも増えるんですよ。それってすごく嬉しいなと思って。音楽をやってる以上、そういうことをやんなきゃいけないなって、今までやってこなかったのがおかしいって。
――じゃあ今年の『ボロフェスタ』のセットリストはギリギリまで考えますか?
チッチ:はい。多分、私が考えます。
飯田:お! BiSHの「オーケストラ」っていう曲が『ボロフェスタ』には合うんですよね。それがどこで出てくるのかを僕は期待してますね。去年、大トリをやってもらった時には「オーケストラ」でステンドグラスの幕が開いた。KBSホールでのBiSHのワンマンでは開かなかったステンドグラスが開いたってことが、僕や『ボロフェスタ』のファンには嬉しいんです。
――それも大きな見どころですよね。『ボロフェスタ』は、新しい試みなどはありますか?
飯田:僕自身がアジア・インディー・ロックがものすごく面白いと感じていて。それはシャムキャッツ、ミツメの功労がすごく大きいんですけど、彼らが中国とか台湾とか韓国を飛び回り、どんどん面白いアーティストと交流している。だからそこを呼びたいなと思って、落日飛車(Sunset Rollercoaster)とかにも声かけたんですけどダメだったんですよ。でもそんな時に、セン・モリモト(「88Rising」からMVをドロップしたシカゴを拠点とする日本人シンガーソングライター)や、台湾のAcidy Peeping Tomが決まってくれた。そんな海外勢が自然と『ボロフェスタ』で交わってほしい。やっぱり、急激に韓国との政治的関係が悪化してて、でも民間レベル、少なくともミュージシャンレベルではみんな仲良いし、尊敬し合っているし、好きなバンドもいっぱいいるから、そういうことが自然に感じられるような場にしたいんです。
――エンタメシーンはそうですよね。
飯田:今年のテーマは「We believe in the power of us」。自分たちを信じよう、自分たちの周りで起こってること、自分たちをちゃんと信じて伝えたりとか、かっこいいと言ったり、どんだけメディアが煽っても、振り回されずにちゃんと自分たちを信じてほしい。チッチがいるBiSHも、『全感覚歳』をやっているGEZANもだし、みんな出るアーティストは筋が通ってるし、海外のバンドも面白いのが出てるなと思うので、最終的なテーマはその言葉になりました。
――チッチさんはアジアのアーティストやバンドは好きですか?
チッチ:好きです。CHINESE FOOTBALLっていう仲良くなったバンドがいるんですけど、歳が近くて。私、全く中国語を喋れないんですけど、ライブを見に行った時に向こうはちょっと日本語を喋れて。ボーカルの子がBiSHを好きでいてくれたんですね。それで音楽だけでつながれることがわかった。一生懸命「君の音楽はいいんだ!」って(笑)、お互いが身振り手振りで伝えて、「いつか絶対2マンしようね」って言い合ったんです。日本のバンド以外でそういうのって初めてだったんですよ。だからすごく感動したんです。こういうつながった人たちと一緒に成長していって、おじさん、おばさんになった時にまた出会えたらすごく楽しみだなと思ってて。BiSHはまだ海外でバンドのライブをしたことがなくって、私は今、それが一番したいことなんです。大きな目標は色々あるけど、今何がしたいですか?って聞かれたら、海外に行きたいっていうのは一番思ってるんですよね。
――では最後に、今年の『ボロフェスタ』にはどういう気持ちで臨もうと思いますか?
チッチ:今年は一番最後にBiSHの出演が発表されたじゃないですか? それって、飯田さんの中できっと意味があってそうしたんだろうなって私は感じたんですね。ずっとヒヤヒヤしてて、もし“やっぱ出ない”とかだったらどうしようと思ってて。
飯田:そんなことないでしょ(笑)。
チッチ:『ボロフェスタ』には私がめちゃめちゃ大好きなバンドが出てて、すごくたくさんいいバンドがいる中、BiSHをここに選んでくれたのには絶対意味があるから、6人でそれを見つけながら……それまでに見つけられたら一番いいんですけど、もし見つけられなかったとしても、その日ライブをしてる時に見つけたいと思ってて。BiSHはメンバーの嗜好もバラバラで、それでも『ボロフェスタ』に立った時は最初にも言ったんですけど、一つになれてる気がするので、『ボロフェスタ』に恥じないライブをします。
取材・文=石角友香 撮影=大橋祐希
セントチヒロ・チッチ(BiSH)、飯田仁一郎(Limited Express (has gone?)/OTOTOY取締役)

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