秋山準インタビュー DDT11・3大田区
でエース竹下幸之介と一騎打ち! 「
このカードはDDTのため、竹下のため
、そしてオレが生きる勝負。彼に負け
ることを望む?そんな気持ちはまった
くない!」

DDTが大勝負をかける11・3大田区総合体育館大会。2020年の総括とも言えるビッグマッチでおこなわれる秋山準vs竹下幸之介の一騎打ちは、ノンタイトルながらも最大の注目カードとなっている。
全日本、NOAHで王道プロレスの中心にいた秋山がレンタルとされているものの、まさかのDDT移籍。そこで目をつけたのが体格的にも近い竹下だった。最初にゲストコーチとして招聘された秋山は、なぜ竹下との抗争を選んだのか。また、秋山はDDTでなにをしようとしているのか。それはまた、全日本で社長も務めた男にとって大きなチャレンジでもある。環境をガラリと変えた秋山の胸中に迫る。
<セミファイナル スペシャルシングルマッチ 30分一本勝負>
秋山準 vs 竹下幸之介
――秋山選手が今年5月、DDTにゲストコーチとして招聘され、7月にはレンタル移籍ということでDDT所属になりました。これを聞いて本当にビックリしました。全日本系の王道プロレスを貫き、全日本の前社長でもあった秋山選手がインディー系の団体に移籍する衝撃といったら…。ご本人としてはどうだったのでしょうか。
「いやあ、全日本で社長も退いて、選手としてもそんなにやることないかという感じのところでちょうど高木(三四郎)さんから話をもらったので、じゃあやってみようかと。メジャーとかインディーだとか関係なく、おもしろそうだなと思ったので、じゃあ一回いってみようかなという感じでしたね、最初はね」
――新しい環境で挑戦してみたいという感覚ですか。
「そうですね、そっちの方が強かったですね。逆に新鮮な気分で、自分自身にはいいのかなという感じでしたね」
――最初はゲストコーチということでしたが、そこで試合をするということもあったのですか。それとも試合は別だったのでしょうか。
「いや、試合しながら教えてくれということなので、それを了解して上がりました」
――技術指導のみならず、リング上で闘いながら教えていくと。
「それが多かったですね、ハイ」
――ただ、DDTといえばエンターテインメント系のプロレスが前面に出てきます。この世界観になにか切り込んでいこうという意識はあったのでしょうか。
「いやあ、切り込んでいこうというのはないです。DDTの世界観が好きだという人もたくさんいると思うんでね。そのなかで高木さんにはしっかりとプロレスの中心のような試合がほしいという狙いがあると思うので、そこでボクがレンタル移籍という形になったと思います。なので、ボクがいままでやってきたことをDDTにプラスできればという感じでしたね」
――「本道のプロレスでもすごいと言わせるために呼ばれたと思っている」というコメントもありました。楽しいプロレスではない部分を託されたと。
「ハイ、そう思いますね」
――そこで目についたのが竹下幸之介選手ですか。
「まあ、竹下選手の場合は4年くらい前、全日本にいた頃にタッグでやっているんでね、いい選手だなというのがそのときからありました。そして今回、高木さんの言葉のなかに『竹下がいまちょっと伸び悩んでいる』というのがあって、それできてほしいというのもあったんですね。それで彼のためにできるのであれば、という思いもありましたね」
――竹下選手という具体的な選手名が挙がっていたと。
「竹下選手も含め、若い選手、他の選手も名前が出てましたね。そういう若い選手を(育ててほしい)というのもあったので、これはおもしろそうだと」
――そのなかで秋山選手の記憶にあったのが、全日本で対戦した竹下選手だった。
「そうそう。そうです。竹下君もそうだし、あのときは遠藤(哲哉)君もいました。遠藤君はいま(KO-D無差別級)チャンピオンですよね」
――以前に全日本で闘ったときと、DDTのリングで闘ったときで、竹下選手の印象は変わりましたか。
「いまは吸収しようという気持ちをすごく感じますね。以前やったとき、オレはもっと若かったですけど、なんかそれこそメジャーに負けるかい!というような気持ちできていたようでした。だけど、いまは吸収してやろうという気持ちが見えますよね。そこが大きな違いですかね」
――竹下選手と再会したことにより、DDT全体への印象に変化はありましたか。
「そうですね、しっかりプロレスの試合をしようとしているのは感じます。全体的には、もうちょっとおもしろい方の感じをイメージしていたんですけどね。それがしっかりプロレスをやろうというのを感じました」
――DDTは幅が広く、本道のプロレスでも魅せられる部分が多いというのは実際に会場で観ると感じます。ただ、全体的なイメージではやはりエンタメ系ですよね。
「そうなんですよね」
――DDTに移籍して以来、竹下選手とは何度も闘っています。そのたびになにか変わっていくところはありますか。
「変わっていってますね。それは間からリズムから、だいぶ変わってきましたね。ボクの間が正しいのかどうか、それはわからないですけど、試合中に時間を取る。前はずーっと動きっぱなしだったんですけど、それがうまく緩急つけるようになってきていますしね、かなり変わってる。ただそれはボクとやるよりも、DDTでいままでやってきた選手たちとやったときに自分の変わり方がわかるんじゃないですかね。ボクはボクのリズムでやってるので、そのリズムと彼のリズムがあってるだけ。その違いがわかるのはほかでやったときだと思います」
――ほかの選手と竹下選手がやったときに、秋山選手との対戦でどれだけ変わったかが測れると。
「そう。そうですね」
――8月に11・3大田区でのシングルが決まったのですが、その後、前哨戦のたびに秋山選手が疑問を投げかけているような感じもします。宿題を投げかけているのかなと。
「ああ、そうですね。そう思います。なんか、いろいろと言ってます」
――シングル決定前ですが、まず強烈だったのが「オマエはDDTのなんなんだ?」という問いかけです。
「それは彼の振る舞いというか、動き。高木さんがオマエに求めているものじゃないよというのがあったので、そのときはそういう『DDTのなんなんだ?』という言葉になったんだと思うんですね」
――それに対して竹下選手は「DDTの強さの象徴になりたい」「ライバルになってください」と言いました。年の差の大きい後輩の選手からライバルになってほしいとの言葉をかけられていかがでしたか。
「ただ単に、コイツには(ふさわしい)ライバルがいなかったんだなと。自分が思うようなライバルがいなかったんだなと思いましたね。かわいそうではありますよね、ライバルがいないって。それも、こんな倍も歳が違うオッサンにライバルってことはよほどいなかったんだなと思うと同時に、オマエがオレとライバルってナメてんのか?というね、いろいろな感情がありましたね。うれしい気持ちとナメてんのかという気持ちと(笑)」
――弟子入りとかではないですからね。
「そうですね」
――もしも弟子入り志願だったらどう対応しましたか。
「やっぱり、ボクの前に立って試合をした方がいいと思うので、弟子入りしてもさほどね(身にならない)。その場合、(対戦相手として)前に立てって言うと思いますよ。言葉がライバルというだけで、彼が言ってる意味は正しいと思います。やっぱり前に立たないとね。弟子になるってことは内に入るってことですから、それはたぶんボクにはできないかなと思いますね」
――それにしても、1人の選手とここまで前哨戦として対戦するというのはあまりないケースですよね。
「珍しいですよね。普通だったら飽きちゃうところですけどね、飽きなかったですね。DDTという新しい環境もあったのかもしれないけど、日々いろいろと彼もアップデートしているのが見えてましたし、そこは飽きなかったですよ」
――秋山選手を飽きさせなかった竹下選手と闘っていくことで、秋山選手自身もなにか変わっていった部分はありますか。
「ボクに関しては、だんだん動けるようになってきましたね(笑)。むかし、何年か前にやってた動きで最近全然やってなかった動きも(できるようになった)。(DDTに)きたときは試合するたびにすごくしんどかったんですよ。だけどやってるうちに練習もちょっと変わりましたし、だんだん息が切れるのも少なくなってきて、いまは確実に変わってます」
――11・3大田区、竹下選手との一騎打ちを前に「最高のコンディションでいく」と宣言されましたが、現在のコンディションはいかがですか。
「いいですよ、いいと思います。昨年とかよりは全然いいです」
――最高のコンディションでいく自信があると。
「いかないといけないですよね!」
――「いままでのオレと思わない方がいい」とのコメントもありました。それはタッグとは闘い方を変えるという意味ですか。
「もちろんそうですね。タッグだと仲間がいますからね。タッグマッチだと仲間のことも考えないといけないですけど、シングルだと自分のことだけでいいので、やはり違ってくると思います」
――その方がやりやすいですか。
「いやあ、タッグにはタッグのおもしろさがありますからね、どっちがどうというのはないですけど。まあシングルの方がボク自身のことを(竹下は)見れるんじゃないですかね」
――さらに秋山選手は竹下選手に対して「若さでこい」「若さが唯一オレを上回っているところだ」と。それ以外は秋山選手がすべて勝っているとのことですが、現時点ではキャリアって絶対に超えられないということを意味しているのでしょうか。
「そうですね。それは無理でしょうね。経験とかそういうところは絶対に無理だと思うので。勝てることで向かってくればいいということです」
――それが「若さ」であると。
「ハイ」
――今回のカードは竹下選手のため?DDTのため?プロレス界全体のため? どうとらえていますか。
「DDTのためにもなるし、彼のためにもなるし、オレのためにもなるし。オレなんかもう全日本から出てDDTにきて、さらにどうなるかわからないというところで、オレが生きる勝負でもありますから。いろんな意味があるんじゃないですかね」
――竹下選手の成長が大きなテーマである以上、ある部分で負けを望んでいるところはありますか。
「ボクですか? ないですね、まったくない!」
――会見でもおっしゃっていましたが、「若い芽を摘む」ような気持ちですか。
「芽を摘まないで栄養を与えていく。それを聞いたら負けを望んでるような感じかもわからないですけど、ボクは後輩に対してはずっとそうやってきたので。自分自身での栄養の撒き方があって、ボクって押さえつけるんですよね。バネはグーッと押さえつけてからパンと離せばバーンと高く跳ねるじゃないですか。中途半端に押したら中途半端にしか飛ばない。でもグーッと押したときにもしかしたらバネが潰れるかもしれない。そうなったらオレはもう知らないし」
――そこは押されてからの本人の責任だと。
「そうです。芽は摘まないけど押さえつけるよと。その後どう跳ねるかは自分次第だよと。押さえつけて潰れたら知らないけど、押さえつけて離したときにおもいっきり飛べればいい。そういうところですよね。若い芽は摘まないけど、押さえつける。どれくらい跳ね返せるか、おもいっきり押さえつけます。もしかしてボクの押さえつけが弱かったらボクが弾き返される。押さえつけられてから彼がどれくらい強いかですね」
――秋山選手には、竹下選手を自身の後継者にしようという考えがあるのでしょうか。
「そんなことはないです。後継者がどうかとかは彼が考えることであって、べつにボクがどうのこうのじゃないですね。ボクの闘いはボクにしかできないので」
――竹下選手との闘いは11・3大田区のあとも続いていくのでしょうか。
「どっちもどっちじゃないですか。ボクが負けたら、ボクはやっぱり勝つまでやりたいと思うだろうし。彼もボクに負けたら『こんなオッサンに負けて』と言ってやるだろうし。勝とうが負けようが、それはなんらかの形で続くでしょうね」
――続いていくであろう闘いのなかで、竹下選手がDDTのエース、プロレス界のエースになれば、秋山選手の任務は達成されたことになるのでしょうか。
「いやあ、その先はわからないですね。それはそのときにならないと。だってボク、去年は全日本プロレスにいて、いまここ(DDT)にいますからね(笑)。1年先さえわからないですから、それはどうなるかちょっとわからない」
――では、秋山選手が11・3大田区に望むこととは?
「まあ、DDTっておもしろいとかそういう方向性できたと思うんですけど、やっぱり(本道の)プロレスで勝負かけていかないといけないと思うんですね。プロレスでもDDTすごいって思われないといけない。それがここ(11・3)からはじまる。そんな大会になればいいなと思っています」
DDTをライブで観戦すれば、本道のプロレスでも高いクオリティーであることがすぐにわかる。とはいえ、インタビュー中にも述べたように真っ先にくるイメージはエンタメ系のプロレスだ。それはそれで活かしながらも強いプロレスをアピールしたい。そのために呼ばれたのが秋山なのだろう。秋山は竹下を通じ大仕事を託された。まずは竹下との試合でなにが生まれるのか。やはりこの試合は、2020年のマット界を代表する闘いになるのは間違いない!
(聞き手:新井宏)

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