FEATURE / (sic)boy, KM『CHAOS TAP
E』 ふたりが描き出すカオティックな
街、東京。1年に渡るコラボレーショ
ンの集大成的アルバム試聴会レポート
& 全曲解説
本稿では、当日の本人たちの会話や様子をお伝えしつつ、(sic)boyとKMによるおよそ1年にも渡るコラボーレーションの集大成的作品『CHAOS TAPE』の全貌を紐解く。
Interview & Text by Takazumi Hosaka
Photo by Hideya Ishima(https://www.ishimahideya.com/)
(sic)boy、KMが抱くそれぞれの“東京”。カオスなアルバム『CHAOS TAPE』制作背景
コロナ禍での動きについて聞くと、「ライブができないからこそ、制作に時間をより多く割けるようになりました。その分、KMさんは大変そうでしたけど(笑)」「(リリック面での)インプットでいうと、確かに外に出れなかったり、人に会えない状況ではあったんですけど、僕は昔からの考えや、これからの自分についてを曲に叩き込むという感じで作っていたので、そこまで大きな変化や影響はなかったですね。ひたすらリリックを書き続けていました」とかたる(sic)boyに対して、KMやゲストらから「真面目だね(笑)」との言葉が投げられる。
また、今年2月にリリースされたEP『(sic)’s sense』の制作とほぼ地続きのような状態で取り掛かったという今作『CHAOS TAPE』のコンセプトやテーマについては、「<眠たい街>、<冷たい街>といった単語が頻出してくるんですけど、僕らの中での“東京”というものが大きな要素になっていて。作っている時は意識していなかったんですけど、改めて聴き返すと、それがテーマみたいなものになっているのかなと」(KM)と回答。ここからいよいよアルバムの全曲試聴が始まる。
また、JUBEEの参加については(sic)boyが次のように説明する。「僕が先にフックを書いて、東京でカマしていきたいみたいなニュアンスをお伝えして。それにJUBEEくんが返してくれた感じです」「それこそ僕らの世代だとあまり90年代のミクスチャー・ロックを聴いている人も多くないんですけど、自分としてはすごく大事にしている部分で。それを今のシーンで体現している人っていったらJUBEEくんかなと思って」。
なお、終盤<body or 精神 which is stronger/body or 精神 oh god>とシャウトするカオティックなパートは、レコーディング時に急遽生まれたのだという。「無くても成立してたけど、JUBEEくんとレコーディングしているうちに気持ちよくなってきて」と(sic)boy。JUBEEは「レコーディングの時は70%くらいしかできてなかったけど、そこからふたりでセッション的に100%までもっていきました。楽しかったですね」と、それぞれレコーディングについて振り返った。
「(コロナ禍で)自分は結構メンタルをやられてしまったので、今年にしか書けない曲を書こうと思いました」(vividboooy)、「でも、前向きな曲になりました」(KM)との言葉通り、<自分らで未来を変えていくシナリオ/We can stand up 2020 仕組まれている緊急事態>といった耳に残るフレーズは、まさに今の世相を反映したフレーズだ。
「わざとキックやスネアを薄くして、ローファイなバンド感を演出しました。ギターは僕と、間奏部分ではシドが弾いたものも使っています」とKMが語る通り、メロコア・バンドさながらのパンキッシュなナンバーとなっている。
メロディックかつ自然な形で韻を踏む(sic)boyのリリック・センスもさることながら、<生きるためにこもる秘密基地/いつのまにか love は believe に>、<説教したがりの馬鹿が多い 多い …>など、尖ったラインも非常に印象的だ。
アルバムのリリースと同時に公開された同曲のMVでは、学校やそれに類する社会からの疎外感も描かれているようで、まさにそんな“はぐれ者”であったであろう両者が音楽を通じて出会い、共に階段を駆け上がってきたことを考えると、KMのアンセミックなトラックは余計に感動的に響く。
12. Akuma Emoji
わずか2分弱。駆け抜けるような性急なロック・ナンバーで幕を閉じる。実に潔い終わり方だ。明確な意味は定義されていないが、ある世代、コミュニティにおいてはある種の共通言語のように使われている絵文字をタイトルにするセンスや、<9 tails fox クラマナルトウズマキ>といった遊び心溢れるリリックも(sic)boyという人間性を物語っているようだ。なお、言うまでもなく、配信中は大量の悪魔の絵文字がコメント欄に投稿されていた。
CD版にはKMによる同曲のエレクトロ・パンクなリミックス「Akuma Emoji (KM Back to 2002 Remix)」も収録されているので、こちらもぜひチェックを。
カオスな景色のその先へ
なお、試聴会は(sic)boyの誕生日を祝うサプライズで幕を閉じた。DJのsathiも登場し、(sic)boyの人懐っこいキャラクターと、愛されぶりの片鱗も覗かせていた。
(sic)boy, KM 『CHAOS TAPE』
Label:add. some labels
Tracklist:
1. HELL YEAH
2. Set me free feat.JUBEE
3. BAKEMON(DEATH RAVE)
4. 眠くない街
5. Heaven’s Drive feat.vividboooy
6. Pink Vomit Interlude
7. Pink Vomit feat.LEX
8. Ghost of You
9. U&(dead)I
10. 走馬灯
11. Kill this feat.Only U
12. Akuma Emoji
13. Akuma Emoji (KM Back to 2002 Remix) ※CD限定
■(sic)boy: Twitter(https://twitter.com/sid_the_lynch) / Instagram(https://www.instagram.com/sid_the_lynch/) / SoundCloud(https://soundcloud.com/sidthelynch666)
■ KM オフィシャル・サイト(https://kmmusicworks.wixsite.com/kmmusic)
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