新演出で甦るミュージカル『オリバー
!』への思いを、ドジャー役を射止め
た少年たちが語る

豪華絢爛な新演出で、日本で31年ぶりに上演されるミュージカル『オリバー!』が、いよいよ2021年10月7日に幕を開ける(プレビューは9月30日から)。原作は19世紀英国の文豪チャールズ・ディケンズが書いた、ヴィクトリア朝イングランドが舞台の小説。孤児のオリバー・ツイストが、辿り着いたロンドンでフェイギンという老人が束ねる子どもだけのギャング団に取り込まれ……という、映画版も大ヒットしたミュージカルの金字塔だ。
厳しいオーディションを勝ち抜き、オリバーをフェイギンのもとに連れて行くギャング団のリーダー、アートフル・ドジャー役に選ばれたのは、大矢 臣(おおや おみ/13歳)、川口 調(かわぐち しらべ/13歳)、酒井禅功(さかい ぜんこう/11歳)、佐野航太郎(さの こうたろう/12歳)の4人(クワトロキャスト/※年齢は2021年9月24日時点)だ。8月におこなわれた歌唱披露イベントに出演した大矢・川口・酒井の3人に、稽古の様子や意気込みを聞いた。また、9月に発表された配役変更で新たにドジャー役に選ばれた佐野へのミニ・インタビューも併せて掲載する。

――歌唱披露イベントでの歌声、とても素敵でした。それぞれに手応えがあったのでは?
大矢 臣 僕はめっちゃ緊張して、ずっとガチガチでした。
川口 調 カメラがたくさんあるなかで歌声を披露したので、最初は緊張していましたが、歌っていくうちに曲に気持ちがうまく乗って、楽しく歌うことができました。
酒井禅功 僕は全力を発揮できたなと思います。でも、もっとどんどん上手くなっていきたいので、これで満足しちゃダメだなと思っています。
――大矢さんは、控室で得意のけん玉をやらなかったんですか? 緊張をほぐすのにいつも持ち歩いていると聞いていますが。
大矢 はい。今日もリュックに入れて持って来ています。でも今日は、使っていなくて(苦笑)。
酒井 それで緊張したんじゃない?
大矢 そうかも(笑)。でも、その割りには歌えたような気がします。本番ではいい緊張感を保ちながら、もっと頑張りたいです。
大矢 臣
――稽古は順調ですか? 顔合わせの日に、クリエイティブチームからレクチャーがあったそうですね。
川口 舞台の構造や、それぞれのシーンの説明が、3時間くらいありました。情報が大量で、うわぁぁぁ!となりましたけど(笑)、そんなところまで考えているんだ!と思うこともたくさんあって、面白かったです。
酒井 セットの絵を見ることができて、『オリバー!』の舞台はこういう風にできているんだというのが、よくわかりました。原作小説の作者は何が好きだったとか、どういうことを経験したとか、そうした説明もありました。
大矢 演出のJ・Pさん(ジャン・ピエール・ヴァン・ダー・スプイ)は、物語の時代背景についても説明してくれました。僕もそれについては事前に調べていたので、答え合わせというか、「合ってたんだな」と思ったりして、ちょっと嬉しかったです。
酒井 J・Pさんは演出の時もすごく優しいよね。本当に舞台が好きなんだなあって感じます。
川口 海外の人だからというのもあるかもしれないけど、演出の時にジェスチャーを入れたり、自分がやって見せてくれるから、とてもわかりやすいよね。
川口 調
――稽古場で一番気になっている共演者は?
川口 ソニンさんです。僕はミュージカル『キンキーブーツ』が大好きで、家でお姉ちゃんと「いつか出たいね」って話しながら一緒に歌ったり、踊ったりしていました。その『キンキーブーツに』に出演されていたソニンさんが目の前にいて、しかも僕と腕を組んだり、一緒にいろいろ歌ったりするので、えっ、うそ!って……感激しました。
大矢 僕は、市村正親さんが気になります。今日の歌唱披露でも、「ポケットからチョチョイと(Pick A Pocket Or Two)」を歌う時にちょっとセリフを足していらしたんですけど、そんなふうに急にアドリブをぶっ込んでくるから、目が離せません(笑)。一緒に稽古していて、笑いをこらえるのが大変な時もあります。
酒井 僕が気になるのは、ソニンさんと濱田めぐみさん。初めて一緒に稽古をした時、ものすごく緊張して、「何でもやるよ(I'd Do Anything)」を歌わなきゃいけないのに、歌唱指導のビリー(山口琇也)さんに教えられていたことを忘れてしまって。ビリーさんに「練習を思い出せ!」って言われて、本当にドキドキしました(笑)。
酒井禅功
――様子が目に浮かびます。度重なるオーディションを勝ち抜いた皆さんですが、自分がドジャー役に選ばれた決め手は何だったと思いますか?
川口 誰よりも全力でダンスを踊ったことかな、と思います。身体が痛くなってもいいから、とにかく身体を大きく使って、思い切り大きく踊ろうと思ってやりました。あと、僕は歌が苦手で、歌を習っているお姉ちゃんに教えてもらったんですけど、なかなか上手くできなくて、泣きながら練習していました。いろいろ試行錯誤しながら一生懸命頑張って、オーディションの時には、いい結果を出せました。
酒井 僕はダンスとか歌の時に、顔芸で勝負しました。顔の表情を全部使って、感情表現を豊かにして。そうやって出しきれたのがよかったのかなと思います。
大矢 僕は、オーディションで特に演技を頑張ろうと思っていました。自分の中では、その時できることを全部やれたように思うので、それかなと思います。
――どんなところに『オリバー!』の魅力を感じていますか。
大矢 『オリバー!』は、やはり音楽がすごいと思っています。どの曲も興味深いし、どの曲にも惹き込まれます。特に好きなのは「必ずここへ帰れ(Be Back Soon)」です。他の曲と比べて軽快で、「これから旅立っていくよ」っていう前向きな明るさが楽しい。ただ、どのナンバーも難しいんです。
川口 難しいよね。曲によっては、ウィスパーボイスを使ったり、途中で歌い方を変えなければいけなかったり。僕も一番好きな曲は「必ずここへ帰れ(Be Back Soon)」なんです。フェイギンさんとギャングたちが息を合わせて歌う、楽しい曲です。舞台上に色んな人物が出てきて、それぞれが同時にいろんなことを表現する「信じてみなよ(Consider Yourself)」も大好きです。外側から観ていても、中に入ってやっても、どちらも楽しいんです。
酒井 言いたいことは全部、臣くんと調くんに言われちゃいました(笑)。僕も音楽は本当に素晴らしいと思っていて。どの曲も好きだけど、特に好きなのは「信じてみなよ(Consider Yourself)」です。
――ダンスについてはどうですか? 日本キャストに合わせて、一から振付けているそうですが。
大矢 1回これでやってみよう、あ、やっぱりこっちの方がいいかな……っていうふうに作っていくので、時間はかかるんですけど、そのたびにどんどんよくなっていくので、とても楽しいです。
酒井 でも大変なんですよ。50くらいまで作っていたダンスが、ゼロに戻ることも結構あります。ドジャーは2人ずつに分かれて稽古をすることが多くて、こっちのチームが覚えた振付を、まだやっていない臣くんと調くんに教えるのですが、振付が急に全部変わって水の泡になってしまうことがあるんです。
川口 僕は全部ノートに書いて覚えるのですが、ノートが結構ぐちゃぐちゃになってきています(笑)。「よし、ここまでの振付を書いたから、これで復習できる」と思っても、ここまでの振付がなくなって、こっちになって……みたいな感じだから。禅功くんは書かなくても覚えちゃうから、すごいよね。いつも、いいなあって思う。
酒井 僕もノートに書くことはあるんだけど、確かに臣くんや調くんほどは書かないかも。見て覚えて、動いて、身体で覚えます。
酒井禅功
――皆さんが演じるアートフル・ドジャーというキャラクターについては、どんなところに魅力を感じますか?
酒井 フェイギンさんとの師弟関係。カッコよさ。あと優しさや強いリーダーシップも魅力だと思います。
大矢 ドジャーは『オリバー!』の登場人物の中でもひときわ個性が強い人物で、たとえば、自分は大人だと思っていたり、初めて出会った人にも気軽に接することができたりする。そういうところに魅力を感じます。
川口 自信に満ち溢れてるところです。僕自身はあまり自信がないほうで、「こういうのやってみてよ」と言われても、尻込みしてしまうタイプ。その点、ドジャーは、自分はカッコイイんだっていうのを見せ付けているようなキャラクター。そこが一番の魅力かなと思います。
川口 調
――自分とドジャーの共通点を挙げるとしたら、どんなところでしょう?
酒井 陽気で元気で、好奇心旺盛で、何事も楽しく。そこが、ドジャーと僕の似ているところかなって思います。
川口 自分を大人っぽく、大きく見せようとするところが、似ているかもしれません。僕も伸長を高く見せたくて、電車の中で背伸びしてみたり、周りから音楽性がある人に見られたくて、音楽を聴きながら電車に乗ったりするので(笑)。
大矢 ポジティブというか、明るく楽しく過ごそうと思っているところが、僕と似ているかなと思います。でも、ドジャーは元々そういう性格なので、とくに意識してやっているわけではないのかもしれません。
大矢 臣
――どんなドジャーにしたいですか?
酒井 僕は、オリバーを惹きつけるお兄ちゃん的存在になれるように頑張りたいです。
川口 自信に満ち溢れた、みんなから信頼してもらえるドジャーを目指します。僕はいつも本番前に「感謝と笑顔でレッツゴー!」って言うようにしています。それを口にするだけで緊張がほぐれるし、「よっしゃ行こう!」という気持ちになって。今回もそのおまじないで、毎ステージ、達成感を味わえるように頑張りたいです。
大矢 僕の理想は、気さくで力強くて、自分を大人と対等だと思っていて、いつも楽しく生きているドジャー。今はまだできていませんが、そんなドジャーを目指して頑張ります。幕が開ける頃には自分がどんなふうになっているか、お客様がどんな感想を持ってくれるのか、今からとても楽しみです。
酒井 僕も、全てが楽しみです。元々『オリバー!』という作品が大好きなので、皆さんにも好きになってもらえるような舞台にしたいです。
大矢 そうだよね。僕たちのドジャーにも注目してほしいですけど、その前にとにかく『オリバー!』という作品を観て楽しんでいただきたいです!
取材・文:岡崎 香   写真撮影:福岡諒祠
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■佐野航太郎が語る、『オリバー!』そしてドジャーのこと
佐野航太郎
ミュージカル『オリバー!』に当初ドジャー役で出演を予定していた本田伊織は、変声期を迎えたことにより、フェイギンのギャング団のキャプテン役に変更となり、同役を予定していた佐野航太郎が、本田に代わって新たにドジャー役を務めることが、2021年9月2日、主催側より発表された。このキャスト変更を受けてSPICE編集部は急遽、佐野に単独ミニ・インタビュー取材をおこなった。
ーー新たにドジャー役を演じることとなり、何か稽古で戸惑ったり、苦労したことはありましたか。
佐野航太郎 僕はドジャー役としては途中から参加したということもあって、お稽古が進む中で分からないことや、戸惑うこと、焦ることも沢山ありました。でも、その度にドジャー役のみんなやギャング団の仲間たち、周りのキャストの方々が、いつも親切に教えてくれたり、温かく支えてくれました。本当にありがたかったです。心から感謝しています。あとは、劇中、(川口)調くんがバトンの動きをするのですが、それがあまりにもかっこよくて上手で。僕も「バトンができたらな」と思ったことはありました(笑)。これからもみんなで助け合っていきたいです。
ーードジャーというキャラクターの魅力は何だと思いますか。
佐野 自分に誇りと自信を持っていて、たくましく人生を思い切り楽しんでいるところかなと思います。スリに手を染める悪賢いギャング団の1人でありながらも、子どもなのに大人の紳士みたいな気遣いが出来たり、フェイギンからは一目置かれ、オリバーの心を一瞬で掴み、ギャングからは慕われるなど、周りの人を強く惹き付ける不思議な魅力がある…そのギャップが本当に魅力的です。僕の課題は「力強さ」なので、ドジャーの魅力を最大限引き出せるように本番までに研究して、強いエネルギーがお客様全員に届くくらいパワフルなドジャーを目指します。
ーーあなたの考える、ミュージカル『オリバー!』の魅力とは?
佐野 沢山あるけれど、まずは音楽なのかなと思います。シーンの切り替わりで雰囲気が変わったり、聞いているだけで情景が目に浮かびます。そして、ストーリーも素敵です。作品に登場する全員が、それぞれの置かれた環境の中でもがきながらも、自分らしく、人生を楽しく生きようとしている所が、とても魅力的だと思います。お客様にもそのエネルギーが届くように全員で力を合わせて頑張ります。今回は、お芝居やダンスも、お稽古を進めながら、1から2021年日本公演のオリジナルを作っているので、お話を知っていたり、「オリバー!」を観たことがある方にも新鮮に楽しんでいただけると思います。
ーー改めて、公演に向けた意気込みとSPICE読者へのメッセージをお願いします。
佐野 昨年から、新型コロナウイルスの影響で沢山の舞台が中止、延期になりました。幕が上がること、お客様に観ていただけること、出演者の1人として舞台に立てることは、本当に奇跡的なことだと思います。どんな時も感謝を忘れず、毎公演を大切に、全力で演じます。どんな厳しい環境でも誇りや自信を持って仲間たちと一緒に前向きに人生を楽しむドジャーを通して、少しでもお客様が笑顔に、元気になっていただけたら、そして「明日もがんばろう!」と思っていただけたら、本当に嬉しいです! 劇場でお待ちしております。応援、よろしくお願いします!
取材・文:SPICE編集部

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