最強の布陣でオムニバスコントを!
加藤啓アワー『オレ、産まれたぞ!』
脚本家&出演者インタビュー

俳優の加藤啓が企画・演出を務めるプロジェクト「加藤啓アワー」の第一弾『オレ、産まれたぞ!』が、2022年3月31日(木)~4月4日(月)に東京の下北沢駅前劇場で上演される。「すぽぽぽぽーん! 爆誕!とびっきりの奇天烈コント5連発!!」をキャッチコピーに、5本のコント劇が繰り広げられる。
脚本には加藤に加え、「おっさんずラブ」「私の家政夫ナギサさん」などで知られる徳尾浩司、M-1グランプリ2021準々決勝進出など今大きな注目を集める若手演劇ユニット「ダウ90000」主宰の蓮見翔、劇作家としての活動とともに大倉孝ニとの演劇コンビ「ジョンソン&ジャクソン」やコントグループ「フロムニューヨーク」などで役者業も務めるブルー&スカイ、元芸人で現在は脚本家、演出家、ラジオパーソナリティとして活動するマンボウやしろと、コントや演劇界の第一線で活躍する面々が揃う。
キャストは2チームに分かれ、「フラワー軍団」には花澤桃花、小林けんいち、竹井亮介、明星真由美、福井晶一、「センター軍団」には中西悠綺、市川しんぺー、辻本耕志、野口かおる、中村まこと、と現在の演劇界を支える名優や若手俳優が名を連ねる。
今回SPICEでは、企画・演出・脚本の加藤啓、脚本を提供した徳尾浩司、蓮見翔、ブルー&スカイ、キャストの野口かおるにインタビューを敢行。企画の趣旨に始まり、作家たちの脚本執筆の背景、それらを演じる俳優の率直な感想などを話してもらった。
(左から)加藤、徳尾、野口、蓮見、ブルー&スカイ

■「こなせる」ことに焦り、産まれ直すことを決意
ーーまず、『オレ、産まれたぞ!』というタイトルに勢いがありますね。
加藤:今年で48歳になる僕の叫びですね(笑)。
俳優としてまずまずの年数活動を続けてきて、言い方は悪いですがいただける仕事を「こなせる」ようになっていたのですが、それって危ないことだなと思って。白髪が生えてきたりして日々身体的な衰えも感じて、だからこそ新しいことに挑戦しないとヤバい。ちょうどそんなことを考えてる時に、吉本興業からこれまで本格的には挑戦してこなかった演出の提案をもらったので、ありがたい機会だからやってみようと腹を決めました。
ーー作家陣もキャスト陣も大変豪華ですね。
加藤:今回最初に決めたのは、「最強の布陣を集めてオムニバスコントをやりたい」という軸でした。自分の大好きなものを作ろうという気持ちで、リスペクトしている作家さんに脚本を、これまでに共演した方や作品を観ておもしろいと思った方に出演をお願いしたら、こういうメンバーに集まっていただけて。

野口:でもなんで自分で出ようとしなかったの? 出たくならない?
加藤:企画を考えてる時には自分もここに出たいと思ったけど、演出と脚本に集中しないと中途半端になっちゃう気がして。僕は器用じゃないから出るとなると演じる方に夢中になっちゃうし、そうすると演じてみて「今の俺、どうだった?」って誰に聞いたらいいかわかんないし(笑)
野口:そっかー。でもわたし、啓さんの演出はすごいと思います。これまでもお仕事してきたけど、演出家としての顔を見るのは初めて。すごく真っ当な指導をしてくれるんです。啓さん自身が役者だから、俳優の心理的な動きを理解してくれていますよね。
加藤:そういう意味で言うと、今日はいないマンボウやしろさんを含めて、今回脚本をお願いした作家のみなさんはご自身で出演もされる方々なんですよね。
企画・演出を務める加藤啓
ーーそうなると、みなさんが稽古を見学するとついつい演出に口出ししたくなってしまいそうですが、いかがでしょう?
徳尾:僕は今回途中経過を観ないことにしたんです。啓さんとは昔から色々ご一緒させてもらって、今回は演出もご自身で担当されるということなので、自分はもう何も手を加えずにまっさらな状態で観てみたいと思って。
加藤:そうそう、徳尾くんはそういうふうに考えてくれたみたいで。ちなみに他の作家さんたちは一回ずつ来てくれています。蓮見くんはどうだった?
蓮見:僕の書く台本はト書きが少なくて、ひたすらバーッとセリフを書いていく感じなんですけど、実際に演じられているのを観たら最初からイメージに近い状態だったんでびっくりしました。
野口:でも蓮見さんはフラワー軍団しか観てないから(※野口さんはセンター軍団所属)、本番でわたしの演技を観たら「全然ちがう!」って激昂しちゃうかも。
加藤:その可能性も秘めてるよね。

蓮見:いや、性格的にもそんなことは思わないですし(笑)、もし自分のイメージしていたものと全然ちがっていたとしてもそれはそれで楽しいです。
野口:蓮見さんの脚本、演じる方もすごく楽しいです。脚本に句読点が全然ないこと自体を蓮見さんからの演出指示だと受け取ったんで、最初めちゃくちゃ早口でパキパキやったら啓さんに直されちゃったけど(笑)。
(左から)野口かおる、蓮見翔

■裏テーマは「家族」
ーーブルー&スカイさんは稽古をご覧になってみていかがでしたか?
ブルー&スカイ:基本的には脚本を提供したらあとはお任せします、って姿勢が正しいと思うんです。だから稽古場に来るにしても今日は見学するだけ、って思っていたのに、最初からいろいろ言ってしまいましたね……。
加藤:いや、僕がお願いしたんで!
ブルー&スカイ:啓さんが「気になることがあったら教えてください」って聞いてくれるので、そうするとすごく細かいことも言いたくなっちゃって、2時間の稽古でたしか50個くらい気になることを言っちゃって……。
野口:セリフも増えましたしね。でも、観てもらえてよかったですよ。
ブルー&スカイ:後々になって「あんなに言うんじゃなかった」って後悔したりして。核になる部分だけをうまく伝えられたらいいのに、そういうのがちょっと苦手で。
加藤:いやいや、その細部にこそブルー&スカイのカラーが出てるんで、すごくいい稽古になりました。
ーーちなみに、加藤さんから各作家さんへ脚本依頼する際、どういうオーダーを出されたんですか?
加藤:何分くらいものをこのキャストで、と指定した上でお願いをしました。各軍団に5人キャストがいて、みんなに3~4本出てもらうプランだったんで、この作家さんにはこの役者さんがハマるんじゃないかって組み合わせを僕の方で吟味して。だから、今回は作家さんに対して特にお題を投げてはいないんですけど、不思議なことに共通点があって。脚本って読まれましたか?
ーーはい、家族ものが多かったですね。
加藤:そうなんですよ。でも、そういうふうに意図したわけじゃなくて。
徳尾:他の方がどんなものを書くかわからなかったので、きっとみんなは王道では来ないだろうと見越した上で、僕は実にストレートでひねりのない家族ものを書きました。
ーーとてもおもしろい脚本でしたが、あれを「ストレートでひねりのない」とおっしゃるのは『おっさんずラブ』の徳尾さんならではです(笑)! 
加藤:次々に家族ものの脚本が届くので驚いたけど、それぞれ作風やシチュエーションは全然ちがうし、個性が出てますよね。

ーー野口さんはほとんどの作品でお母さん役を演じられますね。
野口:この企画をお受けした時は、きっとマフィアの抗争みたいな男の世界のコントが多いと勝手に思ってたんですよ。だからわたしはそんなに大事な役柄じゃないだろうとピクニックに参加するくらいの軽い気持ちでいたんですけど、蓋を開けてみたらお母さん役ばっかりで想像以上に大変で、毎日「やべーやべー!」言ってます(笑)。あ、なんか今日わたしばっかりしゃべってません? すいません、みなさんしゃべってください!
ーーいえいえ、野口さんが現場の雰囲気を明るくしていることがよく伝わってきました! ではインタビューも終盤なので、作家のみなさんが思う公演の見どころを教えてください。

徳尾:今回はコント公演ですが、僕は出演される役者さんたちのお芝居が大好きだから、脚本にボケ数を詰め込みすぎないようにしました。お芝居の味で笑ったり引き込まれたりしてほしいなと思って書いたこともあって、きっとチームごとにお芝居のトーンがちがうはず。そこを楽しみにしてほしいなと思います。
蓮見:僕の場合はちょっと怖かったんで、たくさんボケを入れちゃって(笑)。その打率が高かったらいいなと思ってます。
ーー脚本からダウ90000味が伝わってきておもしろかったです。
蓮見:こうやって他の作家さんと一緒に書かせてもらうからには、普段自分が書いてるものに近い方がいいんだろうなと思って。それを自分ではない方が演出して、自分たちではない方々が演じたらどうなるのか、すごく楽しみですね。
ブルー&スカイ:今回2チームが同じ脚本のものをそれぞれ演じるのは、ダブルキャストとはまた全然ちがうことになるだろうなと思っています。同じ脚本だけど本当に全くちがう2つのものが完成しそうなので、一般客としてそこを楽しみたいです。
ーー最後は加藤さんに締めをお願いできますか。
加藤:想像以上におもしろい脚本とおもしろいキャストが揃いました。「美味しいご飯ができたからぜひ食べて!」みたいな気分。できることなら僕がウーバーイーツみたいにみなさんのお家に届けに行きたいくらいです。演劇寄りのコントは今あまり多くはないですが、そのジャンルを支えてきた面々と若くして才能を発揮している蓮見さんに力を貸してもらって、新しいものを産み出そうとしています。ぜひ産声を聞きに来てください!
加藤啓
取材・文=碇雪恵

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