演出 五戸真理枝からコメントが到着
 秋山菜津子・相島一之ら出演の『貴
婦人の来訪』

2022年 6月1日(水)~19日(日) 新国立劇場 小劇場にて上演される、『貴婦人の来訪』。この度、翻訳家と演出家のコメントが届いたので紹介する。
小川絵梨子芸術監督4年目のシリーズ企画「声 議論, 正論, 極論, 批判, 対話…の物語」の第三弾となる本公演は、フリードリッヒ・デュレンマットの代表作。1956年に初演された本作は、全体主義へと傾倒していった社会への痛烈なアンチテーゼとして話題を呼び、その後、世界各国で多くの演出家の手によって上演され、舞台のみならず、映画やオペラ、ミュージカルとしても上演され続けている名作。
議論を重ねた上での他者との対話が、人間関係にどのような影響を及ぼし、どのような社会を形成するのか。演出に、新国立劇場では『どん底』での大胆でユニークな演出も記憶に新しい五戸真理枝を迎え、おくる。
秋山菜津子、相島一之、山野史人、加藤佳男、外山誠二、福本伸一、津田真澄、山本郁子、斉藤範子、高田賢一、清田智彦、谷山知宏、髙倉直人、田中穂先、福本鴻介、田村真央が出演。
【あらすじ】
小都市ギュレン。「ゲーテが泊まり、ブラームスが四重奏曲を作った」文化都市も昔の話、今は荒れはて、町全体が貧困に喘いでいる。ある日、この町出身の大富豪クレール・ツァハナシアン夫人が帰郷する。町の人たちは、彼女が大金を寄付し、町の経済を復興させてくれるのではないかと期待に胸を膨らませる。
夫人は人々の思惑通り、巨額の寄付を申し出るが、同時に一つだけ条件をつける。
「寄付はするが、正義の名において、かつて私をひどい目に遭わせた恋人を死刑にしてほしい」...。

翻訳 小山ゆうな コメント
2020年6月、芸術監督小川さんの強い思いと劇場の皆様の万全の対策のもと、コロナ禍による劇場閉鎖から再開一本目という新国立劇場の作品(『願いがかなうぐつぐつカクテル』)に、演出として関わらせて頂きました。
あれから、一年、社会は、団結したかと思うと、当時予測していた以上に、再びより深い分断へと向かう事を繰り返し、閉塞感を増しているように感じます。
そんな今に正に合っていて、新しさすら感じさせるデュレンマットの作品『来訪』を上演との事、楽しみにしています。
デュレンマットはドイツ語圏を代表する劇作家の一人でスイス人、ナチスの時代を生き、グロテスクに浮かび上がる社会と人間を描きました。
本作を、デュレンマットは[悲劇的喜劇]と呼んでいます。「正義」の名の下、周到に計画して大復讐を企てる億万長者の老貴婦人の意思により、「ヒューマニズム」あふれる善人であると自身でも思っている町の貧しき人達が、いつの間にか全体主義的に仲間を死に追いやる様が、悲劇でありながらも喜劇的ですらあるというアイロニカルな作品。
デュレンマットの計算し尽くされた言葉達をいかに日本語に出来るか五戸さんと相談しながら訳していきたいと思っております。
演出 五戸真理枝 コメント
私は社会の中で生きるうちに、脆くてはかない自分の心を守るために数々の武装法を身につけてきました。勉強するために、働くために、幸せでいるために。例えば、“文句の多い隣人の話は聞いている姿勢で聞き流す”というのも、武装法の一つです。私はもはや自分が武装していることを意識することなく、でも常に心に鎧をつけて生きている人間です。
私が誰かと“真の対話”をするためには、この心の武装を解く必要があると思うのですが、一度身に着けた鎧を脱ぐことは容易ではありませんし、もしかしたらもう脱げないかもしれません。
そんな私でも、劇場にいて劇世界に浸っている時間だけは、不思議なことにほぼ全面的に心の武装が解除されていきます。いや、そんな気がしています。なので、そういう、演劇という特殊な時間を使って、“対話の難しさ”について考えてみるというのは、ユーモアにあふれた試みだと感じます。
デュレンマット氏の人間や社会を見る目の鋭さと奔放な遊び心。若い男女の心のすれ違いが何十年という時を超えて増幅され、小都市の命運まで揺さぶっていくという展開のダイナミックさには驚かされます。諧謔精神を胸に、哀しき人間の姿を鮮明に立ち上げてみたいと思います。

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