“運命が変わった” あの入賞から時
を経て――ショパンコンクール歴代日
本人入賞者たちがランチタイムに登場
!【出演ピアニスト&プログラムを紹
介】
5年に1度、ポーランドのワルシャワで開催されるショパンコンクールは、その開催間隔がオリンピック以上に長いこと、結果によっては、一夜にして運命が変わってしまうということもあり、高い実力を持つ若手ピアニストがこぞって挑む夢の舞台だ。プログラムは当然ショパンのみ。祖国の大作曲家を誇りに思う地元の聴衆でギュウギュウの満員になる客席、国内外から集うたくさんのメディアに囲まれる緊張感も手伝って、会場には、世界のどのコンクールよりも特別な雰囲気が漂う。
そんなショパンへの深い理解と卓越したピアニズムが求められる場で、かつて上位入賞を果たした日本人ピアニストたちが、『ショパンランチタイムコンサート』に出演。休憩なし約70分間の特別なショパン・プログラムを披露する。
そんな彼が今回のランチタイムコンサートで演奏するのは、コンクールの舞台でも演奏した、「葬送ソナタ」、「舟唄」、「英雄ポロネーズ」に、エチュード「別れの曲」やノクターン遺作、4つのマズルカOp.41を加えた名曲レパートリー。年月を経てますます深まるショパンへの愛情を、存分に見せてくれるだろう。
Rika Miyatani – Etudes, Op. 25 No. 4 in A minor & No. 8 in D flat major (1995)
高橋多佳子は、桐朋学園大学卒業後、ワルシャワに留学。入賞したのはショパン音楽院在学中のことで、ポーランド文化を身近に感じる暮らしを送る中、“ホーム”で挑んだコンクールだった。あまりの緊張で演奏中の記憶ははっきりしていないそうだが、ワルシャワの聴衆の熱気、憧れの舞台で弾く喜び、そしてなにより、そこに向かう準備の過程の濃密な時間のことはしっかりと覚えているという。
左:マルガリータ・シェフチェンコ(4位入賞) 正面:高橋 多佳子(5位入賞) 右:アンナ・マリコヴァ(同位5位入賞)
音楽で祖国への愛を表現しようとしたショパンに寄り添うことの大切さは、今の世界情勢もあってより強く感じていて、「ショパンは難しいと未だに思う」と話す。文化に深く入り込んだからこその、さらなる深遠を求めようとする気持ちで、長らくショパンに取り組んできた。
高橋が演奏するのは、ショパンが作曲家人生にわたって書き続けたノクターンから第4番、第10番、第16番と、詩情と歌心が存分に発揮されたバラード全4曲。それらを作曲年代を追いながら交互に組み合わせることで、作風の変遷が見えるプログラムだ。
スペシャリストのピアノで、ショパンの歌心と望郷の念がたっぷりつまった作品を聴くことができる。楽曲の新たな魅力も発見できるかもしれない。
Takako Takahashi – Mazurek in C major, Op. 24 No. 2 (1990)
お三方とも、“運命の変わった”あの入賞から一層ショパンへの愛着を深め、さらなる高みを目指して音楽性を磨いてきたピアニスト。そしてプログラムは、いずれもランチタイムに楽しむのにぴったりの耳馴染みの良いものでありつつ、ショパンのロマンティックかつ複雑な精神にも触れられる、充実したものだ。
シリーズを通して聴くことで、3人のピアニストたちがショパンの作品に求める音色、歌い方、そして解釈の違いを感じてみるのも、興味深い経験になるだろう。
SPICE
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