【BLINDMAN インタビュー】
自信作なので、
より多くの人に
届くといいなと思っている
“邦ハードロックの至宝”と称されるBLINDMAN。最新作『OUTBURST』は洗練感を纏った良質な新曲と現メンバーで新たに録音した既存曲2トラックが収録されており、彼らの魅力を存分に堪能できる一作となっている。リーダーという枠を超えて総合的にバンドを率いている中村達也(Gu)に、そんな意欲作について語ってもらった。
こういう曲が湧いてきた時は
頭の中で5トラックシーンサーが鳴る
『OUTBURST』の制作に入る前は、どんなことを考えていましたか?
前作(2020年11月発表のアルバム『EXPANSION』)でわりといろんなことをやって、バンドの幅はいくらでも広がると思ったので、その延長で何曲か書いてみようというのがまずあって。それにプラスして、再録したい曲があったんです。あと、ミニアルバムにしたのは前作を出したのがコロナが始まった年だったので、アルバムをフォローするツアーとかができなかったんです。ライヴの本数が極端に少なかったので、前作の曲をやりきった感がないんですよね。だから、いきなりフルアルバムを出すよりも、前作も含めたかたちでライヴをしたい気持ちがあったので、今回はミニアルバムにしました。
一作一作を大事にされていることが伝わってきます。『OUTBURST』に収録されている新曲3曲はそれぞれテイストが異なっていますが、それは意識されたのでしょうか?
いえ、自然な結果です。ただ、いつもそうですが、1曲作ると次は違うものを作ろうという気持ちになるんですよ。なので、自然とはいっても若干は意識していますよね。あと、今回はリレコーディングする曲が事前に決まっていたので、それと被るものは避けたいというのもありました。リレコーディングする2曲がわりとアップテンポなので。それに、歳とともに速い曲はあまり湧かなくなってきていて(笑)。なので、速い曲にはいかなかったというのはありますね。
楽曲がバリエーションに富んでいて、密度の濃い作品になっています。それに、全曲ともにキャッチーなメロディーや適度なハードネスなどが相まって、洗練感を湛えた上質なロックに仕上がっていますね。
僕自身はBLINDMANがHM/HRバンドと呼ばれたり、自分がHM/HRミュージシャンと呼ばれることに抵抗はないのですが、自分のことを表す時は“ロックミュージシャン”としか言わないことにしているんです。“これぞヘヴィメタルだ”という人もいれば、“これはメタルじゃない”という人もいる枠だと思うので、それは僕が言うことではないですよね。僕自身はとにかく枠を作りたくないですし、今回の2曲目の「Destiny」は比較的従来のBLINDMANらしい感じなのかなという気もしますが、「A Man in Wonderland」と「Diamond Dust」に関してはだいぶオープンに、自分の中で自然な感覚でできたものなので。
ハードネスとキャッチーさをうまく融合させることに長けていることを感じます。
僕が普段聴く音楽はブルーズロック寄りのものなんですよ。実は今回のミニアルバムを作り始めた段階では、ちょっとそういう方向に行きたい気持ちになって数曲書いてみたんですけど、こういう音楽はすでに世の中にいっぱいあると思ったんです。今回の1曲目の「A Man in Wonderland」はその中で最後に作ったもので、ブルーズベースだけどモダンな感じがあって、これは自分がやりたかったことだと思っていて、すごく気に入っています。
「A Man in Wonderland」は王道的な匂いがありつつメロディーがキャッチーで、エモさもあるという魅力的な一曲です。BLINDMANの楽曲のメロディーは、ご自身が考えていらっしゃるのでしょうか?
8割方、僕と言っていいと思います。ただ、結局歌詞を書くのはヴォーカルのRayなので、歌詞によってメロディーが変わる部分はありますし、彼が“こうしたいんだけど、どうだろう?”と意見を出してくる時もあるんですよ。そこに対して一番客観的に判断できて、決定権を持っているのは僕になるので、“そっちでいこう”とか“もとのままでいきましょう”というようなジャッジをしています。
では、各楽器のアプローチなども含めたアレンジは?
基本的にはデモの段階でかなりのところまで僕が作り込みますが、メンバーにはそのとおりにやれという言い方はせずに、“これより良くなるなら変えてもいいよ”と言っています。だから、全然もとのままではないですし、特にドラムの實成 峻はめちゃめちゃいろいろやってくるんですよ。でも、彼と一緒に作るのももう4作目になるので、彼も個人のエゴとかではない部分で楽曲のことを考えるようになったし、手数の多いタイプなのでギリのところを攻めてくるんですよね。ドラマーとしてやりたいことと楽曲としての面白みというバランスの絶妙のところを突いてくるので、逆に僕も楽しみにしているところではあって。彼は僕の意図を理解してくれるようになりましたね。最初の頃は“それはやりすぎだろう”と思って止めたこともあったんです(笑)。
細部まで中村さんが決め込むのではなくて、それぞれの意向も活かすという作り方をされているのはいいですね。そして、2曲目の「Destiny」は陰りを帯びたメロディアスなミディアムチューンという。
「Destiny」は言い方は悪いですけど、自分の中で一番考えていないと言いますか(笑)。ごく自然にできるタイプの曲というか、もともと僕がやってきたものに近い楽曲です。
自然体でこういう曲ができるというのは大きな強みですね。ということは、メロディーから入っていったのでしょうか?
メロディーからではなかったです。確かイントロのギターリフから入ったと思います。僕はそういうパターンが多いんですよ。ギタリストなので最初にリフを作ってみて、“これはいいね”となったら、まずそれを録音する。それを聴くとAメロが浮かんできて、“じゃあ、次はこうで、その先はこうだね”という流れが多くて、この曲はわりとサクサク進んでいった気がします。その上でメロディーがある程度“こういう感じかな?”となった時に、どうしたらフックがつくかを考えてアレンジしたという感じでした。“嘘だろう!”とよく言われるんですが、こういう曲が湧いてきた時は本当に頭の中で5トラックシーンサーが鳴るんです。