中村雅俊インタビュー~ホームドラマ
チャンネルでビルボードライブ公演や
出演映画を放送

1974年にドラマ『われら青春!』で主演デビューを果たした中村雅俊。その挿入歌『ふれあい』は、歌手デビュー作にして100万枚を超える大ヒットを記録。以来、役者として、歌手として第一線で活躍を続けている。毎年続けてきたコンサートツアーは、コロナ禍で見送られてきたものの、ここ数年は世界標準のライブレストラン・ビルボードライブでの公演が実現! ホームドラマチャンネルでは、今年7月に東京で行われたステージの模様を余すところなくお届けする(2023年9月17日(日)後7:00~ テレビ初独占放送)。さらに9月から11月にかけては、出演映画4作を続々放送。トップランナーとして走り続け、来年デビュー50周年を迎える中村に、ライブにかける情熱や、支え続けてくれるファンへの思いを語ってもらった。

――ビルボードライブでの公演は、2021年、2022年に続き、今回で3度目になります。中村さんにとって、このライブにはどんな思いがありますか?
俺は1974年にデビューしたんですけど、それからコロナが広がる前まで、45年間、毎年休むことなくコンサートツアーをやっていました。それが途切れてしまって、皆さんの前で歌を歌えなくなるのは、こんなにも辛いことなのか……と改めて感じました。結局、ツアーは今もできていないのですが、その代わりにビルボートという素晴らしい会場で、ホールコンサートとは違うかたちのライブを行うことができて。実際ステージに立って思ったのは、やっぱり歌うのは楽しいということ。特にビルボードは、客席との距離が近いですから。その距離感にちょっと緊張しつつ(笑)、素敵な時間を共有させていただきました。
――今回のライブで印象的なのが、所々に挟まれるMC。ニコニコとお話される中村さんと、笑い声で包まれる会場には、心地良い一体感がありました。
歌は決まったもので変えようがないですから、MCだけは毎回、違うことをしゃべって楽しく進行できたらいいなと。でも、話の内容は当然、全部自分で考えなければなりませんから、実は毎回、何をお話しようか悩んでいるんです(笑)。以前の公演で“ウケた!”というトークがあっても、同じ話はできませんから。大変ではありますが、ファンの皆さんの反応を生で感じられるライブのMCは、自分にとっても大きな楽しみになっています。
――披露される曲目については、どう決めていらっしゃるのでしょう。
セットリストに関しても、毎回、自分で考えています。アルバムとかを含めると、レコーディングした曲が300曲以上あるので、その中から選ぶのはすごく大変ですね。特に今回のビルボードライブは、これまでやってきたホールコンサートと比べて半分くらいの曲数でしたから。それでも、とりあえずヒットした曲はやんなきゃいけないな……という縛りもありましたし(笑)。かなり限られた曲しかできないという状況もあって、選曲にはかなり苦労しました。
――そんな中でも、ギターの弾き語りで『俺たちの旅』を歌ったり、ブルースハープとともに『涙』を披露されたり、たくさんの聴きどころがありました。中村さんご自身、特に思い入れが強かったのは?
全面的に打ち出したわけではないのですが、東日本大震災のことを意識したパートは作りたいなと思いました。12年前、ジャッキー・チェンさんに招集されて、香港でチャリティーイベントに参加したのですが、その時に歌った『雨ニモマケズ』を、今回入れてみようと。それと、震災の応援歌のような曲を作っているんですけど、『雨ニモマケズ』の後に、2014年にリリースしたアルバムから『ワスレナイ』を歌いました。最初にそのパートを決めたら、『俺たちの旅』はアコースティックでやった方が届くんじゃないかとか、デビュー曲の『ふれあい』を歌うのであれば、その前に“幻のデビュー曲”となった『別離の劇』もやろうじゃないかとか。今回はそうやって、「だったら」「だったら」という感じでセットリストが固まっていったんです。
――ちなみに、今回のライブには、『The Look Of Love』というタイトルを付けられていますが、そこにはどんな意味が込められているのでしょう。
今年の5月にNHKのBSプレミアムで放送された『おもかげ』というドラマで主人公を演じたのですが、浅田次郎さんが描いたその作品の世界観が、俺自身すごく好きで。“おもかげ”という言葉自体にもひかれて、その要素をタイトルに入れてみようと。おもかげを英語にすると、いろいろな単語が当てはまるんだけど、俺がまず思い浮かべたのは、「Look」という言葉。それと『おもかげ』は母親や愛がテーマになっていたので、「Love」という言葉も入れようと。誰にもその“いわれ”を伝えないまま、『The Look Of Love』というタイトルに決めました(笑)。もちろん、1960年代に発表された名曲中の名曲『The Look Of Love/恋の面影』も胸に秘めながら付けたタイトルでもあります。
――冒頭でも少し触れていただきましたが、改めてビルボードライブという会場については、どんな印象をお持ちですか?
ちょっと高級感があって、アダルトな感じがして、質の良さとか品の良さを要求されるライブハウス。そんな印象がありますね。歌うことに変わりはないんだけど、コロナ禍前までは2000弱くらいの会場でやることが多かったから、今までと違う景色、違う様式で歌うことになる。そういう新たな決意みたいなものはありました。ステージに立つ前は、不安に思うこともあったんですけど、そういうものは全部杞憂だったと今は思います。俺、歌う時に、自分では全然そんなことないのに、苦しんで歌っているように見えるらしいんですよね(笑)。お客さんとの距離が近いから、それを見られるのが嫌だなぁ……とか思っていたんです。でも、いざふたを開けてみたら、そんなことは全然気にする必要がなく、本当に楽しく歌えて。MCに関しても、ホールコンサートだと、お客さんの顔が見えないから、暗闇に向けて、ある意味一方通行な感じなんだけど、ビルボードではちゃんとレスポンスが届く。アットホームな感じが、本当に心地が良かったですね。ホールコンサートでは、歌のパフォーマンスを上げることを意識しているのですが、今回はMCのクオリティーを上げることを第一に考えました(笑)。それくらいやりやすかったですし、自分にとっても楽しいライブになりました。
――中村さんご自身が楽しんでいらっしゃるのが、映像を通しても伝わってきました。お客さんにとっても印象深いライブになったと思います。
MCでは、訳の分からないことばかりしゃべっていますが(笑)、いつも考えているのは、「感動を持ち帰ってもらいたい」ということ。“感動”っていろいろな形があると思うんだけど、俺はあまり歌がうまくないから、歌そのもので感動を届けるというのは難しい。その分、歌にまつわるストーリーであるとか、流れであるとか、セットリストの作り方といった、ライブを作り上げるひとつひとつの要素を大切にしているんです。もし、そういう思いが伝わって、来てくださった方が、少しでも感動してくれて、心に残るようなライブができていたとしたら、うれしいですね。
――ホームドラマチャンネルでは、ライブ映像に加え、9月から11月にかけて主演映画を放送させていただきます。ラインナップは、『ふれあい』『凍河』『坊ちゃん』『この愛の物語』と、1970年~80年代の名作がズラリ。40年ほど前の出演作が放送されることには、どんな感慨がありますか?
単純にうれしいですよね。俳優の仕事をしていていいなと思うのは、俺の仕事に対して、感動してくれる人がいてくれるということ。こんな素晴らしい職業は、他にはないと思うし、いつも感謝しています。そういう人がいてくれるだけで、表現者として良かったなと思いますし、これからもずっとやっていけると励みになります。中には手紙をくださる方もいて、「『ふれあい』を聴いて人生が変わった」とか、「『俺たちの旅』を見て東京に出てきた」とか。人の人生に少なからず影響しているというのは、本当にすごいことだと思うし、ずっと応援してくださる方がいることは、どんなに感謝しても、し足りないくらいありがたいなと思います。
――最後に、今回の放送を楽しみにしている皆さんにメッセージを。
ビルボードでのライブは、自分の思いをギュッと凝縮して詰め込んだものになっています。表現者としてはつたない部分があるかもしれないけど、その裏には、「少しでも感動をお届けできたら」という思いがある。そういうものを感じ取ってもらえたらうれしいです。それと、今回は特に、昔の歌をたくさん歌っていますから。年齢を重ねた方々には、懐メロを堪能していただきたい(笑)。今回放送されるのはビルボードでのライブですが、この年末には、六本木のEXシアターでコンサートを開催する予定。今後もいろいろな形でパフォーマンスに挑戦していきたいと思っているので、ぜひ皆さんにも会場に足を運んでください。一緒に楽しみましょう!

【中村雅俊PROFILE】(なかむら・まさとし)1951年2月1日生まれ。宮城県出身。1973年、慶應義塾大学在学中、文学座附属演劇研究所に入所。1974年にドラマ『われら青春!』で主演に抜擢されデビュー。挿入歌『ふれあい』で歌手デビューを飾り、100万枚を超える大ヒットを記録。デビュー以来、コロナ禍前まで毎年行ってきた全国コンサートは、1500公演を超える。今年5月にNHK BSプレミアムで放送されたドラマ『おもかげ』では主演を務めた。現在、BS朝日『あなたの知らない京都旅~1200年の物語~』に出演しているほか、BSテレ東『地域にエール!まちカケル』ではレギュラーMCを務めている。

取材・文:海老原誠二
撮影:宮田浩史
ヘアメイク:鈴木佐知
スタイリスト:奥田ひろ子(ルプル)

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