L→R 山﨑浩二朗(Dr)、シンディ(Ba)、はやしゆうき(Fl)、猫田ねたこ(Vo&Key)、だいじろー(Gu&Cho)

L→R 山﨑浩二朗(Dr)、シンディ(Ba)、はやしゆうき(Fl)、猫田ねたこ(Vo&Key)、だいじろー(Gu&Cho)

【JYOCHO インタビュー】
どれだけ音楽的に面白くても
楽曲として良くないと意味がない

歌詞やメロディーが
動いていっているのに
背景が変わらなくていいのか

JYOCHOは本当に面白いです(笑)。3曲目の「栄えた都市」はここまでとはまたテイストが違っていて、ピアノをフィーチュアしたミディアムチューンという。

僕は子供の頃の記憶というのが結構あって、情景と一緒に匂いも浮かび上がってきたりするんです。きっとそれはみんなそうで、それぞれの幼少期の記憶と今の自分の成長記録みたいな感覚があると思うんですよ。

私も物心がついた頃の記憶がずっと残っていて消えることがありません。

ですよね。なんだかすごく変な気持ちになるんですよ。懐かしいというのも違っていて、言語化できませんが。めちゃくちゃ小さい頃にお母さんといて、眠たくなっていて、窓から夕焼けの陽が射していて…といったいろんなことを覚えていて、しかも匂いも覚えている。「栄えた都市」はそういうことを描いています。そして、「人だった」で描いたような時代がやってきて、少し先の未来では幼少期の風景というのはどういうものになっていくんだろうかと。映画とかで現状を描いたあと、最後にそこにつながる昔の情景を持ってくることがあったりするじゃないですか。そういう手法を活かしました。なので、「人だった」と「栄えた都市」は、ぜひ併せて聴いてもらいたいです。

4曲入りのEPで2曲をリンクさせる辺りもセンスがいいですね。「栄えた都市」の楽曲に関してはいかがでしょう?

ピアノの旋律で記憶の匂いみたいなところを表現したいというのがあって。そうなると自然に日本的なコード進行になってしまうところもありつつ、記憶というのは点ではなくて、わりと線とか円になっている感覚が自分的にはあるんですね。なので、ピアノのフレージング的に点ではなくて、いろんなところからつながっていることを感じさせる立体的なリフを作りたかったんです。そういう意識でピアノのリフを組みました。あと、懐かしさを感じさせるピアノにしたいとも思ってノスタルジックなニュアンスも入れました。

今作の「人だった」と「栄えた都市」を聴かせていただいて改めて感じたことがありまして。JYOCHOはプログレッシブロックの匂いがあると思うんですね。

僕はプログレが好きなので、影響を受けているとは思います。僕はミニマルな繰り返しもすごく好きですが、歌詞やメロディーが動いていっているのに背景が変わらなくていいのかということを、ずっと思っているんです。歌詞やメロディーが動いていっているなら背景も変わっていくだろうという考え方なので、結果的に結構プログレしてしまっているかもしれません。

プログレッシブロックというと大胆な場面転換やストーリー性のある構成といった印象がありますが、JYOCHOはストレートな楽曲でもプログレを感じさせることが特色になっています。そこからプログレッシブロックというのは凝った展開などが本質ではなくて、情景の描き方に長けた音楽であり、だからだいじろーさんは惹かれるのではと思いました。

それはありますね。プログレッシブロックは映像的な楽曲が多くて、そこがすごくいいなと思うので。

その辺りの嗜好性を活かして、ポップスのフォーマットでいながらプログレが香るというところに落とし込んでいるJYOCHOは本当に魅力的です。そして、最後は「惑星かぞえて」というスローチューンです。

この曲は“夜空”とか“惑星”といった言葉が出てきますが、“気づき”がテーマになっているんです。生きていくと積み重なっていく気づきがあるという話で、その気づき同士がつながった時に自分の中でハッ!とすることがあって。“これってこういうことやったんか!?”と昔は理解できなかったことが、歳を取ると理解できるようになるということを歌った曲です。

“気づき”がテーマの歌詞ですが、私は“人というのは孤独に感じても、必ず誰かとつながっているよ”ということを歌っているようにも感じました。

そうです! 本当にそうなんですよ。そういう言葉は入っていないけど、裏側にそういう想いがある。なので、それを感じ取っていただけて嬉しいです。

哲学的な歌詞と透明感のある翳りを湛えた楽曲が相まって、深く染みる一曲に仕上がっています。「惑星かぞえて」は歌中の澄んだクリーントーンとサビの曇った質感のドライヴトーンのコントラストを活かしたギターも絶妙です。

この曲はちょっと新しいことに挑戦したくて、楽曲のイメージや表現したいことを残しつつ、もともとはサビをバロック音楽っぽい感じにしようと思ったんです。この話をするのはめっちゃ恥ずかしいんですけど(笑)。バロックっぽい感じにしたくて、最初はそういうコード進行のピアノでかたちにしたんですよ。そうなった時、きれいな音だけだとバロック感が強すぎるので、ギターでロックな感じに持っていくことにしたんです。この曲のサビは自分の中ではエモーショナルな感情や結構アツいことを歌っているとは思っていて。世の中の仕組みもありつつ自分の気づきを歌うというか、そういう面もあるので、ここはもうガコーン!と包み込むような歪みだけど、でも行ききらないみたいなところに持っていきました。その上でバッキングではなくて、指弾きのアルペジオにしたりとか。そんなふうに、結構試行錯誤した曲ではありましたね。

最初はバロックだったわけですが、結果的にUKロックっぽくなっていて、すごくカッコ良いです。さて、『導き、捧げて e.p』はJYOCHOの新たな魅力を味わえる注目の一作になりましたし、本作のリリースを記念したライヴが2月に東京、3月に大阪で開催されることも嬉しいニュースです。

JYOCHOは新しいドラマーが入ったんですよ。21年にhatchくんが脱退してドラムを募集したところ、たくさんの方が応募してきてくれまして、厳選の結果、山﨑浩二朗くんが新規ドラマーに確定しました。今はメンバー一丸となって少しずつライヴをし始めていて、だんだん良くなってきているんです。それに、次の2月と3月のライヴに向けて演奏できる曲を増やしていきたいと思っていて、サポートドラマーではできなかったセットリストの組み方をしています。新規ドラムが入って気合いが入っていますし、新しい作品を携えたライヴですし、しばらく演奏していなかった曲も披露するということで観応えのあるライヴになると思いますね。なので、『導き、捧げて e.p』と併せて、ぜひライヴも味わっていただきたいです。

取材:村上孝之

配信EP『導き、捧げて e.p』2024年1月10日リリース No Big Deal Records

ライヴ情報

『JYOCHO EP Release TAIBAN 「導き、捧げて」』
2/24(土) 東京・Spotify O-nest
3/24(日) 大阪・Live House ANIMA

JYOCHO プロフィール

ジョウチョ:2015年3月に解散した宇宙コンビニのリーダー“だいじろー”により、16年に始動した京都発のバンド。プログレッシブ~ポップスなどさまざまなジャンルを通過した音楽性に、テクニカルなトラック、温かみ、激情をふんだんに盛り込んだ、まさに情緒感たっぷりな、JYOCHOにしかできない独自の世界観を構築する。JYOCHO オフィシャルHP

OKMusic編集部

全ての音楽情報がここに、ファンから評論家まで、誰もが「アーティスト」、「音楽」がもつ可能性を最大限に発信できる音楽情報メディアです。

新着