【ONE OK ROCK インタビュー】
キャリアを一望するセットリストと
生き方を問う姿勢を凝縮した
渚園ライヴを映像化
3月から凱旋公演となる4大ドームツアーを敢行するONE OK ROCKが、2016年9月10日&11日の2日間にわたって自己最大の11万人を動員した野外ワンマン『ONE OK ROCK 2016 SPECIAL LIVE IN NAGISAEN』を完全映像化してリリース。
2014年後半以降は制作の全行程をアメリカで行なった7thアルバム『35xxxv』(2015年2月11日発表)を携えて海外に軸足を置いた活動を本格化。今回映像作品となってリリースされる2016年9月10日&11日に静岡県浜松市の渚園特設会場で開催された『ONE OK ROCK 2016 SPECIAL LIVE IN NAGISAEN』は、海外での活動が増えた中で、日本のファンに向けた公演となったのだった。初期からのファンはもちろん、アルバム『35xxxv』の大ヒット&ロングセラーによって新たに生まれたファンのライヴへの渇望感は想像を絶するヒートアップぶりで、11万人を動員したこの2日間も1バンドによる野外フェスのような様相を呈するとともに、生身の4人を目撃したい、同じ空間の中にいたいという熱気もあふれていた。
映像は浜名湖の水面を映し出しながら、5万5,000人がいくつかのブロックに分けられたオールスタンディングのフィールドをドローンが空撮でとらえた迫力のオープニングからして高揚感が掻き立てられる。広大な野外フェスでポピュラーになった手法だが、このライヴの立地的、規模的な特徴を抑えるのに必須の映像だろう。このスペシャルライヴのために販売されたTシャツやラバーバンドに身を固めたファンの歓喜と熱狂もひしひしと伝わってくる。そして当然、あの広い会場では巨大なビジョンはあってもメンバーひとりひとりのプレイや表情までは現実的に観ることができなかったのは事実。今回の映像作品の最大の観どころは、まだ真夏の暑さが残るあの日、もちろん普段かそれ以上の激しいアクションとプレイを観せながら、時に最高の笑顔を観せる4人、“かかってこいよ! お前ら!”と煽りながらも最後列まで冷静に見通しているようなTakaの強い視線を確認できること。これはむしろ生では味わえない、彼の瞬間瞬間を判断する明晰さを実感できる、映像ならではの素晴らしさだろう。さらに、Toruのフレージングやギターソロ、Ryotaのスキルフルな5弦ベースの巧みさ、Tomoyaの緩急を抑えたドラミングの全てが、視覚はもとより、分離のいいクリアーな音像で迫ってくるのも嬉しい。
本公演は久々の凱旋公演であり、野外の単独公演という特別感もあって、セットリストもアルバム『35xxxv』を主軸に据えた内容から、デビュー時の楽曲や当時の最新曲でこの2日間のライヴで初披露された配信シングル「Taking Off」(2016年9月16日発表)まで、キャリアを一望するようなレアな内容が組まれていたことも大きな観どころだ。オープニングナンバーは「Re:make」。彼らのオリジナリティーが広く知られることとなったアルバム『残響リファレンス』(2011年10月5日発表)の収録曲で、このライヴでは同作からの選曲がもっとも多かったのが印象的だ。アンコールでTakaがフィールドの中央にあるサブステージまで一気に駆けながら、“いいか、お前ら、絶対後悔するなよ!”と叫び、またステージに走って戻ってきた時にプレイされたのは「キミシダイ列車」。1度切りの人生をおまえはどう生きるのか? 今のままでいいのか?ーー常にTaka、そしてONE OK ROCKは全身全霊で問いかけているが、この少し懐かしいナンバーと彼がとった行動と発言は、今後もずっと我々のケツを叩いてくれるはずだ。ONE OK ROCKが特別な存在である理由のひとつとして、彼らのライヴに触れたあとに残る妙な焦燥感があると思う。素晴らしいライヴを体験した感激とともに訪れる自問自答。こんなバンドは世界広しと言えどなかなか見当たらない。もちろん、熱狂の場面だけではなく、センターのサブステージで展開されたアコースティックセットでの「the same as...」でのTakaのバラードシンガーとしての凄みや、Toruの繊細なプレイ、そしてそれを息を詰めて見守る5万5,000人の集中力、その全てが稀有な光景である。
なお、DISC2にはロサンゼルスで行なわれた『Ambitions』のレコーディングドキュメンタリーも収録。よりアメリカの音楽シーンを意識したあの作品が完成に向かうプロセスの一端を垣間見ることができる。
世界で活動することがデフォルトになってきた最近のONE OK ROCKが、日本のファンにこそ観せたかったものが詰まったこの映像作品の意味を噛み締めながら、間近に迫った3月からの日本凱旋公演である4大ドームツアーで、今度はどんなレベルにいる4人に会えるのか? 良い意味で自分の小さな常識をぶち壊すほどの存在感を楽しみに待ちたい。
文:石角友香