L→R 本多響平(Dr&Cho)、宮原 颯(Vo&Gu)、井口裕馬(Ba&Cho)、諒孟(Gu&Cho)

L→R 本多響平(Dr&Cho)、宮原 颯(Vo&Gu)、井口裕馬(Ba&Cho)、諒孟(Gu&Cho)

【irienchy インタビュー】
“本当の自分でいよう!”と
歌いたい

バンドを辞めようという話には
不思議と一回もならなかった

諒孟さんが作詞作曲を手がけた「カレーなる休日」は、これまでになかった感じのアプローチで新鮮でした。

諒孟
アルバムの中でも一番新しい曲ですね。あまりあれこれ考えすぎず、“カレーが好きだからご飯もので行こう”みたいな感じで作りました。
宮原
この人、めちゃくちゃなんですよ(笑)。もちろん僕が歌うわけなので、共通点を考えて作り始めたらしいんですけど。
諒孟
“僕と颯くんの共通点って何だろう?”から出てきたテーマが“ご飯が好き”だったんで(笑)。
井口
もっとあるでしょ!
諒孟
食べている印象が強かったのよ、俺の中で。あとは、ユーモアが欲しかったのと、“ご飯を好きな人と食べるのいいよね”みたいなイメージで進めました。最初につけたタイトルは“ご飯かパンかじゃ嫌なんだ”だったんですけど、もうちょっとお洒落な感じにしたっていう。
宮原
お洒落っていうか、駄洒落ね(笑)。

間奏の《Na Na Na Na... ナン》《るーるーるーるー... ルウ》も含めて、駄洒落をユーモラスに効かせてますよね。

本多
そうそう(笑)。
諒孟
やるならとことんいこうと。クスッと笑える感じもありつつ、楽器を重ねるよりもコーラスを多用して楽しさを出してみたり、いろいろチャレンジしています。
宮原
俺が遊び心で入れた口笛とか、何かと新しいよね。ライヴでも場面を大きく変えられそうなので、演奏するのが楽しみな曲です。

寒い季節に合うような温かい雰囲気が「ライライライ」(2021年10月発表のミニアルバム『○○者』に収録)の朗らかなサビと通じると思いました。あの曲にも“ご飯”が出てきますね、そう言えば。

諒孟
やっぱりirienchyにとっての大事なワードなんだよ。
宮原
あははは。でも、諒孟さんはもともとこの曲そんなに乗り気じゃなくなかった? “ちょっと面白い曲ができたかも”くらいでさ。
諒孟
駄洒落感が強めだったからね(笑)。
宮原
どっちかって言うと、他の3人のほうが先にテンションが上がったんです。そこから“ちゃんと作ろうよ!”となったので、諒孟さんをノリノリにさせたのは俺と裕馬と響平だと思う。

その結果、諒孟さん主演のMVも出来上がって。

諒孟
びっくりしましたね。まさかMVができて、ああいう内容になるとは(笑)。
宮原
MVではメンバーが芝居をしているシーンもあるんですけど、あれって実はあまり演技っぽくないっていうか。普段のirienchyとほぼ変わらないんですよ。諒孟さんがデートをしているのを見つけたとしたら、たぶん俺と裕馬と響平はああいうふうに追っかけるので。
井口
まんま、ああなるよね(笑)。
本多
バンドの自然体な感じ、4人の関係性が出ていると思います。
諒孟
絶対についてこないでほしいけどな!

「カレーなる休日」「今日も同じ」と続く、中盤のゆったり聴ける曲もいい感じでした。irienchyはこういうミディアム曲も得意ですよね。

宮原
もともと僕は静かな曲が好きなタイプで、カラオケでもバラードをよく歌っていたりするから、こういうテンポのほうが馴染みやすいんですよ。アッパーな曲に関してはこのバンドを始めて以降、徐々にできるようになっていった感じで。

「今日も同じ」は一見マンネリを思わせるタイトルでありながら、何気ない日々の尊さが感じられるような曲になっています。

宮原
当たり前の日常が面白くなくなっちゃうタイミングってあるじゃないですか。ずっと同じことをやっている気がしてしまう瞬間。でも、実際には当たり前の日々を支えてくれている人がいての当たり前だったりするので、 “これが今の幸せなのかな”と考え方をちょっと変えた視点で作った曲ですね。

ディスコ調の踊れる曲「ミラクルダンサー」も新味でした。

諒孟
かなりチャレンジだったと思います。“BPM140で踊れる曲を作ってみよう”というところから作り始めたんだよね?
宮原
サウンド的にはそうだね。歌詞は僕がFM福岡でラジオ番組をやらせていただいているんですけど、そこでFSM(福岡スクールオブミュージック)の学生たちとイベントでコラボできたことから生まれました。

というと?

宮原
学生のみなさんがすごく本気を出してきてくれたんですよ。イベントに対する熱量がめちゃくちゃ素晴らしかった。僕らがライヴの時にステージに飾っている“入江”の表札も彼らが作ってくれたりして、その姿を見たら“俺もちゃんとしなきゃな!”とパワーをもらえたというか。恩返しで何かがしたくて、その子たちのことを想像しながらエールを込めた曲を書いたんです(※「ミラクルダンサー」のMVもFSMの学生たちが制作した)。

そして、「ミラクルダンサー」にはSpecialThanksのMisakiさんがゲストヴォーカルで参加されています。

宮原
《私はセンスだってさ 何にも持ってないしさ どうせ向いてないとか言うんでしょ?》の部分を女の子に歌ってほしかったんです。Misakiちゃんとは前のバンドの時からかかわりがあったので、ダメもとでお願いしてみたんですけど、快く引き受けてくれました。レコーディングもサッと録り終えた感じで“プロってすごいな〜!”と驚いちゃいました。
本多
“俺らはプロじゃないな”ってなっちゃうくらい(笑)。全irienchyが沸いたもんね!
宮原
“颯くん、こんな感じでいい?”と言われて、“良すぎます!”としか思えんかった。曲のことも気に入ってくれてましたね。

「ヒトミシリ流星群」に続き、西平 彰さんがアレンジャーとして加わったことでもインパクトのある仕上がりになったなと。

宮原
西平さんも“これはいい曲だね!”みたいな感じで、楽しそうに作業してくれました。いきなりラップになったり、ど派手なギターソロがあったり、聴きどころが満載です。
諒孟
ドラマチックなストリングスも入っていて、華やかさがあるよね。

ベースとドラムは生音ですか?

井口
ベースは生です。ノリノリで楽しく弾けました。
本多
ドラムは打ち込みなんですよ。独特な質感で面白い仕上がりになったと思うし、ライヴで演奏するのが楽しみです。

切ない失恋ソングで爽やかな疾走感もある「ne?」も良かったです。

宮原
これは僕が学生の頃に作った曲なんです。今回、irienchyでアレンジして生まれ変わった感じですね。

8曲目の「ずっと」ももともとは颯さんが高校時代に作った曲でしたよね?

宮原
そうです。まさに「ずっと」と同じくらいの時期にできた曲なので、すごく大人なテイストに成長したと思いますね(笑)。ただ、歌っていることは昔から本当に変わってなかったりもして。さっき話した「今日も同じ」もそうなんですけど、幸せな今があって、それがなくなってしまうのが怖い、みたいな切り口から曲を書くことが、僕はすごく多い気がします。

ラストを飾る「パオーン」はアルバムで一番クレイジーな曲であり、irienchyの無敵感が出ている曲とも言えるのかなと思います。

井口
ですよね(笑)。展開が予測できないところがある。
本多
そもそもオケ先行だったから、ギミックありきで考えた結果、摩訶不思議なアレンジになったんだと思います。
宮原
これは2年くらい前に初めてクラウドファンディングをやった時、リターンのスペシャルプランを購入してくれたひとりの方のために書いた曲なんですよ。

本当にスペシャルな企画ですね。

宮原
はい。で、内容もライヴが生きがいくらいに大好きなその子のパーソナリティーをダイレクトに反映させたものになっているんですけど、すごくいろんな人に伝わる曲だと思ったんです。「最強のぼっち」と同じ感じですよね。対象を絞って書いた曲なのに、そのほうがむしろ普遍性が生まれるっていうか。みんなに届けようとする考えって、邪悪な感じなのかもしれません。

後半には台詞パートも入ってきますね。

宮原
上司が迎えに来るくだりも、その子のエピソードなんです。ライヴに行くと次の日が起きれないとか。あれこれ盛り込んでいるんですけど、ちょっとヘンテコなところもありつつ、すごくいい曲なんですよね。なので、アルバムに収録させてもらいました。
本多
ライヴでどうやるのかが考えものだね(笑)。

全編を通して、やりたいことが存分にやれたアルバムじゃないですか?

宮原
今出せる全部は出せました。「パオーン」の台詞部分にしても、やってみたいと思った衝動から生まれたものだし。こうやってハミ出していきたいですね、これからも。
諒孟
おっ、アルバムのテーマにうまくつなげたな(笑)。

コロナ禍とほぼ同時に始まったバンドがここまで来ましたね。

本多
なんとか生き残りました!
諒孟
irienchyは良くも悪くもゆるっと始まったのが良かったのかもしれない。
井口
確かに。そうならざるを得なかった感じでもあったけど。
宮原
苦しい時期ももちろんあったけどさ、バンドを辞めようという話には不思議と一回もならなかったな。響平が酔っぱらった時に冗談で出たくらいか。
全員
あははは!
本多
ぜんぜん覚えてないわ!
井口
俺らも“はいはい”程度にしか聞いていないから(笑)。
本多
いやー、楽しくてあっと言う間の4年でした。これからもガンガン行きます!

リリース後の予定などは?

宮原
まだ決まってないんですけど、アルバムのツアーをやりたいです。
諒孟
俺らはシングルのリリースでもツアーをやっていましたからね。
井口
アルバムでやらないわけにはいかんよね。
本多
むしろリリースなしでもやっていたんで(笑)。まずはアルバムを聴いてもらって、待っていてもらえたら嬉しいです。

取材:田山雄士

アルバム『MISFIT』2023年12月6日発売 BIGRANDE MUSIC
    • DRR-1001
    • ¥2.500(税込)
irienchy プロフィール

イリエンチー:2020年1月、元MOSHIMOの宮原 颯(Vo&Gu)と本多響平(Dr&Cho)が新たに結成。同年4月に1stミニアルバム『START』、23年12月に1stフルアルバム『MISFIT』リリース。恥ずかしいほど正直な心の声や日常に潜んだセンシティブな感覚を紡いだ詩と、どこかほっとするメロディー。ポップにまとまりながら攻撃的な一面のあるテクニカルな演奏など、4人それぞれの感性が絡み合い、先が読めない非凡な可能性と美学を秘めた4ピースバンド。irienchy オフィシャルHP

OKMusic編集部

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