みねこ美根

みねこ美根

【みねこ美根 インタビュー】
ここから先を予感させる
新たな指標としてもぴったりの2曲

2019年1月に配信EP『心火を従えて愈々』をリリースし、以降も小名川高弘がサウンドプロデュースを手掛ける楽曲を発表してきたみねこ美根が、新たな2曲「水面へ」「僕らは飛べるようにできてる」を完成させた。情熱や寂しさ、虚しさという感情が受け取れると同時に、彼女の歌にはいつも冷静さがある。

「水面へ」に込めたのは
ざらつく砂のような寂しさ

2019年8月に下北沢 GARDENで開催したワンマンライヴから約半年という短いスパンで、計4回のワンマンライヴを開催されていますが、どんな刺激がありましたか?

“みねこ美根が魅せる世界”を改めて示す上で顧みて考えたこと、また、実際にお客さまと“ワンマンライヴ”という空間をともに体感した瞬間は刺激的です。どの形式のライヴでもその瞬間のベストを尽くすことに変わりはありませんが、対バン形式のライヴでは初めましての人に何を魅せるかを中心に考えたり、自分にとって新たな挑戦を試みたりしています。ワンマンではここまで応援してくださっているみなさまに集大成としての安心感と、次への可能性というワクワク感、斬新な裏切りという驚きをどう魅せるか改めて企てていくので、実行に移す段階も含めて刺激的ですね。お客さまとその時間と空間を感じ、対話する感覚、そして先の世界を感じさせる瞬間は、やはりワンマンライヴという、いつもより長い時間を経てお魅せできるものがあります。

ファンの方からの言葉を受けて、ご自身の心境や価値観に変化が起きることはありました?

お客さまからは“ワクワクがあふれて止まらない”“みねこ美根の世界をもっと見ていきたい”とおっしゃっていただけて、私とともに次なる場所を楽しみにしてくださる方が増えていることがとても大きな変化です。“みねこ美根のこれまでの歩みは間違っていなかったんだ”という確信と自信がさらに強まっています。“もっとこんな扉もあって、その奥にはこんな世界が広がっているんですよ”“もっと新しい場所へも連れて行けるんですよ”“もっと貴方とこんなふうに繋げるんですよ”と、早くお見せしたいものや伝えたいことが増えているという変化もあります。みねこ美根を好きでいてくださることがみなさまの自慢になるようにと、変化が動力につながっていることも確かです。

20年1月に吉祥寺Rock Joint GBで行なったワンマンライヴを拝見しましたが、その時に美根さんはタンポポのようなアーティストだと思ったんです。気が付かずに通りすぎてしまう場所に咲いていることもあれば、子供が摘んで誰かにプレゼントするような花でもあるし、たまにコンクリートだらけの場所でもしっかりと生えていて見守っているような存在にも感じる。それでいてフワフワとどこへでも飛んで行ける夢もあって。

タンポポと言っていただいたのは初めてで驚いています。生命力が強く、根が茎の何倍も深く伸びる植物ですよね。強く根付き、繁栄のため風の動力を味方に遠くへ行こうとする野心的なところは重なります。そして、飛べる姿に変わる狡猾さは必要なところです。どこへでも飛んで行けるような可能性を感じてもらえてとても嬉しいのですが、私には少しかわいらしすぎる印象です(笑)。

何か他に“〇〇っぽい”と例えられたことはありますか?

以前“食虫植物っぽい”と言われたことはあります。捕まえてジワジワ溶かして虜にしたいです。

配信シングル「水面へ / 僕らは飛べるようにできてる」はそのワンマンライヴに合わせてリリースとなりましたが、この2曲はなぜ今回のタイミングだったのでしょうか?

今は“曲はたくさんできているのだけれど、発表する段階までに時間を掛けている”という状態で、ライヴではレコーディング途中の段階でも披露しているのですが、配信のタイミングは“ここだ!”という“満を持してのリリース”として発売しているんです。加えて、楽曲を製作し、完成させることは私の仕事ですが、発売に関してはスタッフの意見も重要に考えています。今回の2曲について言えば、音源を心待ちにしてくださっているお客さまや、この楽曲から初めてみねこ美根に出会う人に、私の曲を心に侵入させて情景を思い広げてもらうのがいいと考えました。今のみねこ美根がお伝えしたい質感と湿度をより感じてもらえるものになっています。そして、きっと前に配信している楽曲たちも聴きたくなると想像しました。初めて配信リリースしたEP『心火を従えて愈々』からちょうど1年が経った今、ここから先を予感させる新たな指標としてもぴったりの2曲です。

「水面へ」は“涙も夢や未来につながる”という直向きなメッセージを感じましたが、楽曲を聴き進めていくと、まだその域に辿り着けずに煮え切らない想いを抱えている様子が浮き彫りになっていくのが印象的でした。苦しい想いに向き合って、受け止めることができるようになったタイミングで書けた曲なのかなと思ったのですが。

実はその逆で“最期まで受け止めることはできないんだと気付いていくこと”を書いたというほうが近いです。私の人生のタイミングとの関連性よりかは、大切だと思っている人が何を考えているのかも分かり得ない、大人になれば強くなれると思っていたのに脆さや危うさに気が付く、といったざらつく砂のような寂しさを書きました。もちろん聴いてくださるみなさまには、この曲をご自身に引き寄せて自由に味わっていただきたいのですが、私としては他の人のことを完全には分かり得ないと理解しているのに、ひとりではいられないどうしようもなさ、でも決してひとつにはなれない虚しさが根底にあり、この曲の世界はもうどうにもならなくなった“果て”にあるものなんです。

サビに向かって押し上げていくメロディーが自身を鼓舞しているようにも感じました。どうしようもなくなった果てから追い上げるようなイメージも受取れましたが、美根さん自身は弱々しくなってしまった時こそ頑固になるタイプですか?

鼓舞しているように感じたというのは非常に興味深く、感覚的に聴いてくださって嬉しいです。弱々しくなってしまう時は、そういう時にだけ目に付く言葉だったり、突き刺してくる音に耳を澄ませます。追い上げるというより、追い込みます。でも、私の場合、弱々しくなるというより、弱々しいふりをしている自分に酔ってしまうという表現が的を射ていますね。

「水面へ」で歌っている想いは、また何度も押し寄せてくる波でもあると思います。完成してみて思うことはありましたか?

狙い通りに、そしてそれ以上に、質感や湿度に伝えたい世界が滲み表れたと言えます。この曲の中では、“きっと最期に見るものは、頭の上で揺らめく水面と、最後の呼吸が泡となったきらめきだろう”というところまで想定しています。先ほどお伝えした“大切だと思っている人が何を考えているのかも分かり得ない”“大人になれば強くなれると思っていたのに脆さや危うさに気が付く”といった水辺にいるのに乾いた砂のような気持ち、書き分けても漂う気持ちは、言葉にもサウンドにも質感や湿度として表れており、みなさまにも感じていただけるものになったなと。

美根さんの楽曲はいつも情熱的なのに、どこか冷静なところも魅力的だと思います。“気持ちを少し整理してから曲にする”など、アウトプットする時に意識していることは?

ありがとうございます。“自分”に埋もれた熱意は、情熱はあっても説得性に欠ける持論でしかないです。伝えるためには、その熱意を燃やし続けながらじっくりと見つめないといけません。楽曲として表す時は、熱意を持って身を焼く私と、燃え続ける自分を助け出さずに観察し続ける私が必要で、意識していることです。
みねこ美根
配信シングル「水面へ / 僕らは飛べるようにできてる」

OKMusic編集部

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