【有華 インタビュー】
10年分の想いを込めた
過去と未来をつなぐ作品
大阪出身のシンガーソングライター・有華が6月22日に配信EP『Stamp Rally』をリリースした。今作にはInstagramやTikTokなどのSNSで話題を呼んだ「Partner」や、大切な友人への感謝を込めた「バースデーソング-2022 ver.-」など、新曲を含む6曲が収録されている。飾らない性格が魅力的な有華に話を訊く中で見えてきたのは、“嘘をつかない”という信念を持つ彼女が培ってきた人生そのものだった。
自分を偽ることはせずに
目の前にいる人を大事にする
有華さんはもともと音楽と近しい生活を送ってきたんですか?
そうですね。3歳から15歳まで合唱をやっていたんです。中学から高校まではバスケ部とダンス部だったので、音楽とは関係のない活動ではあったんですけど、昔から歌うことは大好きでした。
どういう音楽が好きでした?
その頃からずっと絢香さんが大好きで、今も変わらず目標の人であり、憧れの存在ですね。パワフルな歌声を持つ方であることももちろんですが、つらい時も楽しい時も変わらずに寄り添ってくれる歌を歌う方だと思うんです。私自身が彼女の歌に何度も助けられてきましたし、自分も誰かに寄り添えるような歌手になりたいと思うきっかけになった方でもあります。
シンガーソングライターとして活動をスタートさせたのはいつ頃だったんですか?
高校3年生の時にコンテストを受けたんですけど、その時の審査員の方に“ピアノが弾けるのなら自分で曲を作ってみたら?”と言われたことが始まりですね。そこから友達への感謝を綴った曲だったり、恋をしている友達のことを書いた曲だったり、自分のことを曲にするというよりかは、身近な人のことをテーマにした楽曲を作っていきました。
自分の内面を曝け出すよりは誰かに対する気持ちをストレートに表現する楽曲を中心に書いていったんですね。
はい。例えば、EP『Stamp Rally』の1曲目に入っている「バースデーソング-2022 ver.-」は、もともと20歳の誕生日を迎えた友達にプレゼントするために書いた曲だったんですけど、それを渡した時にその子がめちゃくちゃ喜んでくれたんですよ。そういうふうに自分の歌で誰かが喜んでくれたことが嬉しくて、当時はそれをモチベーションにして曲を作っていましたし、自分がどう思うかよりも聴いてくれた方がどう思うかに重きを置いた考え方は、今も変わらずにあります。
では、InstagramやTikTokなどのリスナーと近い距離にいられるSNSは、ありがたい存在でもあったんでしょうね。
そうですね。Instagramを始めたのが2016年あたりだったんですけど、その頃はまだ歌動画を載せている人が少なかったんですよね。それに、当時のInstagramは大学生や10代の人が中心となって活用していたツールだったので、自分と近い年代の人に自分の歌を届けたい身としては最適な環境でした。そのおかげで輪が広がってツアーも組めるようになりましたし、行ったことのない土地でも私を待ってくれていた人がいるという感動がありました。大学生最後の年に大阪で人生2回目のワンマンライヴを行なったんですけど、1回目はお客さん30人中20人が親戚っていう状況だったのに、その時は200人キャパのほとんどが、Instagramで私のことを知ってくれたお客さんだったんですよ。
SNSで広がるメリットを感じる反面、難しいと感じることもあります?
リスナーの方に少しでも疑問に思われる部分があったら離れられてしまうところはSNSの怖いところだと思います。そういう関係を守るためにも自分を偽りたくなかったので、怯えずに、嘘のないありのままの自分を曝け出すということは決めていたんです。とは言っても、どうしても誤解は生まれてしまうものですし、SNSが嫌になった時期もありました。
そこからどういうふうに立ち直ったんですか?
コロナ禍になってからライヴをした時に、こんな状況にもかかわらず直接会いにきてくれる人がいると分かり、いなくなる人のことを考えず、“今、近くにいてくれる人のことを考えよう”と思うようになりました。自分の中では、“SNSでの有華=自然体でハッピーな人!”というイメージが伝わるように心がけているんですけど、それは楽曲を聴いたら“意外とメンヘラじゃん!?”とギャップを狙っているところもあります(笑)。
そうしたギャップは、まさに今作に通じるものがあると思っていて。「バースデーソング-2022 ver.-」や「Partner」で超ハッピーに幕開けて、「Marry me」で最高のゴールをするのかと思いきや、「サヨナラのはじまり」で落ちるじゃないですか。その浮き沈みは有華さんの性格にも通じるものがあるんですか?
ありますね…私は超メンヘラなので(笑)。あとは、好きな人にいきなりフラれてしまったり、仕事でもてんてこ舞いになったり、そういった激動の20代を今作で表現しているというのもあります。
楽曲面で言えば、「Partner」はCHIHIROさんとの共作になっていますが、これも初の試みだったんでしょうか?
そうですね。楽曲提供をしていただくことが初めてでしたし、歌詞を書いてもらうにあたって、CHIHIROさんには私の恋愛観を“これでもか!”ってくらい細かくお伝えしたんですよ。そのおかげで自分を客観的に見ることができたし、とても楽しかったです。さっき自分はメンヘラだと言いましたが、溜め込むタイプのメンヘラではなく、喜怒哀楽の展開が超速いタイプのメンヘラなんですよ(笑)。だから、そういう目まぐるしい部分も伝わるようにしてもらいました。その中でも《毎日可愛いって言ってね》と自分の女っぽい部分も入っているので、正直言ってめちゃくちゃ恥ずかしかったです。でも、そこに共感してくれた人たちが、この曲を使ってカップル動画を撮ってくれているのを見ると、作って良かったと思いますね。
「Marry me」もまた結婚をテーマに本音を歌っている楽曲ですね。
今だから残せる曲だと思って作りました。20代後半になると、結婚に踏み込めないとか、プロポーズをしてもらえなくて悩んでいるとか、そういった悩みを持つ同年代の友達が多くなるんですよね。でも、“なんで向こうの動きを待たなきゃいけないんだ? こっちにはこっちのタイミングっていうものがあるんだぞ!”という気持ちがあるので、この「Marry me」に関しては“最近、この曲が好きなんだよね~”って言いながら相手に聴かせて、無言の圧力をかけるのに使ってほしいと思っています(笑)。
あははは!(笑) 部屋の片隅にそっと『ゼクシィ』を置かれるより食らいそう(笑)。
確かに! 最後のサビは女の子たちで合唱しているようなアレンジにしているんですけど、あの部分はまさに女たちの叫びですね。