ロバート・パーマーが誰よりも早く
ニューオリンズ・ファンクに
挑んだ傑作
『スニーキン・サリー・
スルー・ジ・アリー』

卒倒しそうなメンバーが顔を揃えた
ニューオリンズ&
ニューヨークセッション

才能は認められていたとは思うが、ソロアーティストとして未知数の新人にアルバム制作の予算がどれだけ組まれていたものなのか。「好きなように希望を出してくれ、君に任せるから」なんて、うまい話はないだろう。と思うのだが、本作のレコーディングには主にニューヨーク、ニューオリンズ、そしてミックスにナッソーのコンパスポイント・スタジオ(アイランド・レコード所有)が使われている。詳しいレコーディング・データが公表されていないので分からないが、もしかすると、これ以外にも同レーベルのスティーヴ・ウィンウッド(トラフィック)やメル・コリンズ(キング・クリムゾン)、クリス・ステイントンらが参加しているところを見ると、ロンドンセッションもあったかもしれない。いずれにしても、ニューヨークでは後にあのスタッフを結成するメンバーも含まれる超実力派セッションメン、リチャード・ティー(Key)、コーネル・デュープリー(Gu)、ゴードン・エドワーズ(Dr)、バーナード・パーディ(Dr)らが参加している。そしてニューオリンズではミーターズからアート・ネヴィル(Key)、レオ・ノセンテリ(Gu)、ジギー・モデリステ(Dr)が、そして多くの曲でリトル・フィートのローウェル・ジョージがギターで参加するほか、「ブラックメイル(原題:Blackmail)」という曲をローウェルはパーマーと共作しているのだ。このニューオリンズセッションにはこんな逸話もある。空港で待ち合わせたパーマーとローウェルはすぐに意気投合、彼の口ききで、あのアラン・トゥーサン所有のシー・サウンド・スタジオに車を走らせ、そこでセッションが行なわれることになったというのだ。予約もアポもすっ飛ばしてそんなことが…という話の信憑性はともかく、英国はおろか、米国ではロバート・パーマーの名前はほとんど無名の新人だったのではないか? よほどのツテ/コネ、あとはギャランティがなければ実現しなかったと思うのだが。

と、これを書きながらも、今更ながら、こんなことよく可能になったな…と感心しながら、とにかくアルバムを聴いてみるとしよう! 収録曲は以下のとおり。トータル36分と今では考えられないくらいコンパクトな長さだが、中身は濃い。

1. セイリング・シューズ/Sailin’ Shoes (w / The Meters、Lowell George)
2. ヘイ・ジュリア/Hey Julia
3. スニーキン・サリー・スルー・ジ・アリー/Sneakin’ Sally Through the Alley (w / The Meters、Lowell George)
4. ゲット・アウトサイド/Get Outside (w / Lowell George、New York Rhythm Section)
5. ブラックメイル/Blackmail (w / New York Rhythm Section)
6. ハウ・マッチ・ファン/How Much Fun(w / The Meters、Lowell George)
7.フロム・ア・ウィスパー・トゥ・ア・スクリーム/From a Whisper to a Scream (w / The Meters、Lowell George)
8. スルー・イット・オール・ゼアーズ・ユー/Through It All There’s You (w / New York Rhythm Section、Steve Winwood )

OKMusic編集部

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