最後期のザ・ラスカルズが
本気でロックした
『アイランド・オブ・リアル』

『The Island of Real』(’72)/The Rascals

『The Island of Real』(’72)/The Rascals

名曲「グルーヴィン」や「ロンリー・トゥ・ロング」など多くのヒット曲で知られるヤング・ラスカルズは、黒人音楽専門レーベルのアトランティックと契約した最初の白人グループで、65年にシングルデビューしている。60年代後半になるとアトランティックはレッド・ツェッペリンやイエスなど多くのロックアーティストを獲得するようになるが、65年の時点で白人ばかりのヤング・ラスカルズがアトランティックと契約するのは異例中の異例であった。それだけ、そのサウンドは黒っぽかったのである。彼らの生み出す音楽はブルーアイドソウルと呼ばれ、もちろん他にも黒人音楽に影響を受けた白人は少なくなかったが、ラスカルズの“黒っぽさ”は筋金入りであった。今回紹介する『アイランド・オブ・リアル』はラスカルズの最後のアルバムで、どちらかと言えばポップスやソフトロックの立ち位置にいた彼らが、渾身の力を込めて作り上げたロックスピリットにあふれるポップソウル風の傑作である。

黒人音楽オタクたちによるグループ結成

ヤング・ラスカルズはジョーイ・ディー&ザ・スターライターズというR&Bグループに在籍していたエディ・ブリガッティ、フェリックス・キャバリエ、ジーン・コーニッシュの3人と、エディの旧友ディノ・ダネリの4人で結成された。エディとフェリックスは黒人音楽オタクで、彼らふたりがラスカルズの音楽性を決定していた。当時、アメリカでもイギリスでも若者たちはR&Bに夢中であり、ビートルズのジョン&ポール、ストーンズのジャガー&リチャーズらも黒人音楽オタクとして勉強を積み、自分たちの音楽を生み出している。

アトランティックにはアリフ・マーディン、ジェリー・ウェクスラー、トム・ダウドといったこれまた音楽オタクの敏腕プロデューサーが在籍し、彼らはアーティストの良さを最大限に引き出すことで知られる。中でも、ジャズシンガーだったアレサ・フランクリンをソウルに転向させた功績は計り知れない。ヤング・ラスカルズはアリフ・マーディンとトム・ダウドがバックアップしており、彼らの方向性をうまくコントロールしている。2枚目のシングル「グッド・ラヴィン」(カバー曲)は早くも全米1位を獲得、ヤング・ラスカルズはヒットグループの仲間入りを果たす。エディ&フェリックスのコンビによるオリジナル曲作りも功を奏し、「ユー・ベター・ラン」(‘66)や「ロンリー・トゥ・ロング」(’67)など多くのヒット曲を生み出すわけだが、彼らのキャリアにおける最高のナンバーは「グルーヴィン」(‘67)だ。この曲は全米1位となっただけでなく、彼らが真のR&Bグループであることを証明した名曲中の名曲である。

『ペット・サウンズ』と
『サージェント・ペパーズ』の影響

60年代後半になると、サイケデリックロック、プログレ、ハードロックなど、ロック界では年々新しいスタイルが生まれている。ビーチ・ボーイズの『ペット・サウンド』(‘66)やビートルズの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』(’67)といったコンセプトアルバムに影響されたエディとフェリックスは、ヤング・ラスカルズからザ・ラスカルズへと改名しリリースした4thアルバム『夢みる若者(原題:Once Upon A Dream)』(’68)では、ストリングス(アリフ・マーディンのアレンジ)や実験的な効果を盛り込むなど、新生ラスカルズとしてこれまでのR&Bグループの枠組みにとらわれない試みで成功する(全米チャート9位、R&Bチャート7位)。

OKMusic編集部

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