『DR. FEELGOOD』/Mötley Crüe

『DR. FEELGOOD』/Mötley Crüe

モトリー・クルーが挑んだ本格派の
ロックアルバム『DR. FEELGOOD』

現在、行なっている『THE FINAL TOUR』が改めて、その世界的な人気を印象付けたモトリー・クルー。LAメタルの旗手としてロックシーンに登場してきた彼らの歩みを振り返りながら、最高傑作と謳われる5thアルバム『ドクター・フィールグッド』の魅力を紹介する。

80年代の快進撃と90年代の低迷

“これでおしまい!!”と今年2015年いっぱいで活動を終えることを掲げ、モトリー・クルーは昨年の夏から“THE FINAL TOUR”と題したワールドツアーを行なっている。この原稿を書いている現在は、さいたまスーパーアリーナ2デイズを含むジャパン・ツアーの真っ最中だが、改めて34年にわたるモトリー・クルーの歩みに思いを馳せると、そこにロックンロール・バンドのひとつの在り方を見ることもできるんじゃないかという気がしている。
USメタルの前衛として、地元であるロサンゼルスのみならず、アメリカのロックシーン全体をリードした80年代こそが彼らの全盛時代だったことは誰もが認めるところだろう。暴力事件やドラッグ禍など、さまざまなスキャンダルを起こしながら、傑作の数々を次々と送り出していった活躍は、まさにセックス・ドラッグ・ロックンロールを地で行くものとして、ある意味、称賛に値するものだった。この時代の代表曲のひとつである「Live Wire」を、VAMPSがライヴで演奏していることで、そこからオリジナルに遡ったリスナーもきっと少なくないのでは。
そんな80年代の快進撃を思えば、90年代のモトリー・クルーはボロボロだったと言わざるを得ない。グランジブームをきっかけにロックシーンの世代交代が起こり、古いロックの代表として槍玉に挙げられるようになってしまったことが低迷の始まりだが、本来はそこでバンドが一丸となって、俺たちは俺たちだと逆境を乗り越えなければいけなかったはずなのにモトリー・クルーは方向性を見失い、メンバーチェンジを繰り返した。
それでも彼らは解散せず、メンバーそれぞれにソロプロジェクトに取り組みながら断続的にバンドを続けてきた。そのうち2000年代になると、不思議なことにパンクシーンから80年代のモトリー・クルーを改めてリスペクトする若いバンドが現れ始める。彼らが言うにはロサンゼルスのストリートシーンから現れてきたモトリー・クルーはパンクのアティテュードを持っていたのだという。グランジやメロコア以降の普段着感覚というか、等身大の表現に対する反動だったのか。スリージーかつグラマラスなロックンロールがまた求められはじめたのかもしれない。04年に再びオリジナルラインナップが顔を揃えたモトリー・クルーはそれから10年、精力的に活動を続けてきたわけだが、終わりにしてもいいと決断できたということは、自分たちでも納得できる10年だったにちがいない。
路線変更、フロントマンの交代など、決してカッコ良いとは言えない姿を晒しながら、それでも低迷していた90年代のどこかで解散しなくて良かった。潔くぱっと散ってしまうのもありだと思う。しかし、モトリー・クルーは続けてきた。そこにどんな信念があったのか。もちろん、計画してできることではない。なりゆきというところも大きいとは思うが、80年代の快進撃に加え、90年代の低迷があったからこそ、彼らの最後は余計に感慨深いものになるんじゃないか。いい時も悪い時もとことんドラマチックにというところがモトリー・クルーらしい。熱狂的なファンがいる一方で、叩かれることも多いモトリー・クルーだが、彼らが生きているのは憎まれっ子が世に憚るロックンロールの世界だ。品行方正じゃつまらない。何年か後、やっぱりやめるのはやめたと戻ってきてもモトリー・クルーなら僕は大歓迎する。

アルバム『ドクター・フィールグッド』

この『ドクター・フィールグッド』は89年発表の5作目のアルバム。それまでのグラムロック路線を改め、ワイルドでタフなイメージを打ち出した前作『ガールズ・ガールズ・ガールズ』の延長上で、よりヘヴィなサウンドを打ち出した野心作だ。全米No.1ヒットになったことを考えれば、彼らの最高傑作と言っても差し支えないだろう。

プロデューサーはこの2年後、メタリカの『メタリカ』を手がけるボブ・ロック。シングルカットされた「キックスタート・マイ・ハート」がドラッグの過剰摂取で心臓が一時停止してしまったベーシスト=ニッキー・シックスの実体験を題材にしたものであることはファンの間では有名な話。臨死体験が彼らを本気にさせたのか。メンバー全員、ドラッグを絶ち、レコーディングに臨んだそうだ。メタル・ファンのみならず、全ロックファン必聴のアルバム――そんなふうに大風呂敷もモトリー・クルーなら躊躇なく広げられるのだ。

著者:山口智男

OKMusic編集部

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