悲運のバンド、
バッドフィンガーを率いた
故ピート・ハムが残した
『セヴン・パーク・アヴェニュー』
ピート・ハムは1975年4月24日に27歳で亡くなっている。…と書くのも辛くなる、もう50年近くなるというのに未だに胸が締めつけられるような気持ちにさせられるのは、亡くなった原因が自ら命を絶ってしまったからだろう。数あるロックミュージシャンを見舞った悲劇的なエピソードの中でも最も悲痛さを伴うものだった。そして、その才能を思うと、もう少し彼が決断を思いとどまり、80年代、90年代と曲を書き続け、歌っていたら、間違いなく…と、成功を予想させたからだろう。だから余計に彼のことを思い出すたび胸が痛む。あまりにも惜しい。今更ながら、音楽界のとてつもない損失だったと思う。
本作『セブン・パーク・アヴェニュー』
について
全23曲中、未発表曲が19曲もあった。ピートの未発表音源はまだ残されていたらしく、本作のあと99年には続編となる『ゴールダーズ・グリーン(原題:Golders Green)』がリリースされ、こちらも必聴である。また、本稿を書くにあたってネット上のサブスクリプションを調べると、2013年にはデビュー前の1966年、67年頃に録られたとする『Keyhole Street:Demos』というデモ音源集がVol.1、Vol.2とアップされているほか、2023年にも『Gwent Gardens』『Misunderstood』というデモ音源集がリリースされている。さすがに曲のダブりもあるし、良好な録音、内容のものは本作『セブン・パーク〜』で出尽くしているとも言えるが、どれも問題なく聴け、興味深い内容だ。現在のところ正規版のCDとしてリリースされてはいないようだが、未だに音源が発掘されていることに驚いている。ピートの遺族や知人たちの尽力による発表だと思うが、その熱意と愛情には頭が下がる。