ロバート・パーマーが誰よりも早く
ニューオリンズ・ファンクに
挑んだ傑作
『スニーキン・サリー・
スルー・ジ・アリー』
ローウェル・ジョージ
(リトル・フィート)の才気、
ミーターズの熱気、端正なパーマーの
センスが結実した傑作
LP時代は「ハウ・マッチ・ファン」 からB面に移る。これまたニューオーリンズ・ファンクを意識したとおぼしき、イントロからドクター・ジョン、プロフェッサー・ロングヘアが弾いていそうなローリング・ピアノ、そしてミーターズが弾き出すビートが作るセカンドラインのうねり、そこに女性コーラスが絡むなか、パーマーがソウルシンガー然とした持ち味たっぷりに熱く歌う。そして、熱気が冷めやらぬまま、続くアラン・トゥーサン作の「フロム・ア・ウィスパー・トゥ・ア・スクリーム」もバックはザ・ミーターズとローウェルが固める。スケール感のあるゆったりとしたナンバーで、ワウワウペダルを使ったギターはノセンテリだろう。その上を這うようにローウェルがスライドを滑らせる。このコンビネーションも卒倒ものだ。そして、アルバム最後を飾るのはパーマーのオリジナルで12分を越えるジャム風の展開で聴かせる曲。セッションはニューヨーク組を中心に行われるが、ゴードン・エドワーズのシンプルだがよくうねるベースが全体を引っ張る中、ハモンドオルガンとエレピをスティーブ・ウィンウッドが弾いている。バーナード・パーディのドラムがスイッチを入れるように、後半はかなり熱いファンクジャムになる。ウィンウッドは時期的には自分のバンド、トラフィックの最後のアルバム『ホエン・ジ・イーグル・フライズ』(’74)を出す頃だが、そのアルバムでもここで聴けるようなファンク風のインプロヴィゼーションをやっている。パーマーのヴォーカルからはスライ&ファミリー・ストーンの影響も感じさせる。
アルバムはビルボード200で最高位107位、シングルカットの「Get Outside」が105位、母国イギリスではチャートインしなかった…というと惨憺たる結果に終わったように聞こえるが、そんなことはない。下位ながらもアメリカではアルバムは15週にわたってチャートに入ってその後の根強いファンを獲得したし、何よりパーマーは評論家筋に高い評価を得ることになった。これは始まりであったのだ。