ハードロックの
プロトタイプを作り上げた
ジェフ・ベックの『ベック・オラ』

『Beck-Ola』(‘69)/Jeff Beck

『Beck-Ola』(‘69)/Jeff Beck

ジミヘンと並んでロック界に大きな影響を与えたギタリストと言えば、真っ先にジェフ・ベックの名が挙げられるだろう。ヤードバーズ時代から現在まで、50年以上もトップギタリストとして活躍しているのだからすごい存在である。彼のギターの特徴は先が読めないところにある。曲にマッチしたソロを弾かないというか、理性よりも獣性が勝ったプレイでリスナーを惑わせるのである。ある意味で器用貧乏なのかもしれないが、どんな時も彼の熱い魂が感じられて惹き込まれてしまう。今回紹介するのはジェフ・ベック・グループとしての2作目となる『ベック・オラ』で、彼の多彩なギターワークはもちろん、ハードロックのプロトタイプとも言える名パフォーマンスが詰まった傑作である。

ロックンロールからロックへ

ロックンロールが誕生した時、過激なダンス音楽だと言われ、良識ある(=古臭い、旧態依然とした)大人たちからは毛嫌いされていたわけだが、今からすれば当時のロックンロールは不思議に感じるぐらいおとなしい音楽で、同時代のR&Bやジャンプブルースのほうがもっと過激であった。ただ、表面的にはおとなしいが、その裏には過激で既存の価値観を壊すべく生まれた音楽であったことは間違いない。要するに、生まれたばかりのロックンロールスピリットは70年代のパンクスピリットとほぼ同義であり、若者が本来持っているエネルギーが噴き出す火口のようなものでもある。

しかし、当時ロックスピリットは表立っては定義されることがなかったために、ロックンロールからロックスピリットのエッセンスを抽出するためには、60年代半ば過ぎまでの時間が必要であったのだ。60年代にアメリカで登場したガレージロックやサイケデリックロックのグループは、ロックスピリットのエッセンスが凝縮されてはいたが、メジャー契約をしていないだけに、その精神は簡単には広まらなかった。

60年代半ばになるとアメリカではビートがこなれ(白人化していく)てきて、タイトな8ビートが増えていく。イギリスではロックンロールとブルースが相互に影響し合い、演奏技術が大幅に向上した時期である。イギリスはロックの本場ではないだけに、ブリティッシュロックのミュージシャンたちはストイックに技術を習得していく。ブリティッシュ・インヴェイジョンの頃には、その技術を逆輸入したアメリカでも演奏技術が向上するのだが、まだフォークリバイバルやボブ・ディランの影響が大きく、“ロック”の進化はイギリスが一歩早かった。

1967年の転機

ロックがロックであるためには、ポップスの要素が強かったロックンロールの呪縛から放たれる必要があった。1967年になってジミヘンの『アー・ユー・エクスペリエンスト?』やビートルズの『 サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド&ニコの同名アルバム、ドアーズの『ハートに火をつけて(原題:The Doors)』、ピンク・フロイドの『夜明けの口笛吹き(原題:The Piper At The Gates Of Dawn)』、クリームの『カラフル・クリーム』など、ロックンロールから見ると異端とも言えるロック作品がこの年に次々とリリースされることで、新しい“ロック”の輪郭が徐々に明確になっていく。

ヤードバーズを辞めた
ジェフ・ベックのソロ活動

1966年末、ヤードバーズを辞めたベックはソロアーティストとなり、シングルを3枚リリースする。その3枚はどれも、A面はヒットを狙ったポップなテイストの作品で、B面に彼のやりたいロックを収録していた。中でも「ベックス・ボレロ」(ジミー・ペイジ作)では、ジミー・ペイジ、ジョン・ポール・ジョーンズ(この後、レッド・ツェッペリンを結成する)、キース・ムーン(ザ・フーのドラマー)、ニッキー・ホプキンス(ブリティッシュロック界を代表するキーボードプレーヤー)が参加、ペイジとジョーンズのふたりはこの時のベックのアイデアを元にレッド・ツェッペリンの構想を練っている。

OKMusic編集部

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