ロック史上、最も神秘かつ
謎に包まれたバンドとされる
サード・イアー・バンドの
異端の世界を覗いてみる

徹頭徹尾、
インプロヴィゼーションにこだわる

彼らの音楽は基本的にほとんどがアコースティック(後年はエレキやシンセも多用される)で、即興演奏が切れ目なく続くというパターンで、少なくともロックというよりはミニマルミュージック、チェンバーミュージック(室内楽)、アンビエント、フリーミュージック、中近東やチベットなどの民族音楽(エスニック)、タブラが多用されるインドの古典音楽ラーガ、そしてアヴァンギャルド…などのジャンルが適当かと思う。映画『マクベス』のサウンドトラックを手掛けたアルバムなど、まれにヴォーカルが入っている曲があるが、ほとんどインスト(演奏のみ)で、大衆性やポピュラー音楽とはかけ離れた位置にある音楽ではないかと思う。きっと、本盤や彼らがロックの扱いをされているのは、きっと当時の情報のなさから、ピンク・フロイドや所属するレーベル『ハーヴェスト』との関連、あと拡大解釈すると、彼らの音楽はトリップ感、酩酊感を誘うところがあり、サイケデリックブームと勝手に結びつけられたのかもしれない。

また、パブリシティもそうだが、レコードをどのジャンルに並べて売ればいいのか、現場の担当者たちは困惑したのではないか。まさか「トリップにお勧め」とは言えないわけで。結果、判断のしようがなくロックの片隅に彼らのアルバムは置かれたのだと想像するが、これは冒頭で名前を出した同じエクスペリメンタルロックを代表するバンドのヘンリー・カウにしても、カンタベリーロックの一派なのでロック扱いしやすかったものの、その音楽に触れてみればロックの枠に入れるのには無理がある。やはりアヴァンギャルドでしかないのではないか。

私自身、音だけを聴き流してきたのだが、聴き方によっては難解でもなければ、決してとっつきにくい音楽ではない。ただ、初めて聴いた時から思っているのだが、本作や彼らがやっている音楽がそもそもロックというジャンル、カテゴリーに入れていることに猛烈に違和感を感じたものだ。サード・イアー・バンドのメンバーも、ロックなど意識しなかったかもしれず、自分たちの音楽がまさかロックの範疇に入れられるとは、さぞかし苦笑していたことだろう。

OKMusic編集部

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