何度もリイシューされ続ける
永遠の名盤、
ヴァレリー・カーターの
『愛はすぐそばに』(‘77)で聴く、
色褪せない歌声
豪華ゲスト陣、
選りすぐりの楽曲に加え、
可憐さだけでない、
うまさが光るヴァレリーの美声
ここからLP時代はB面に移る。ソウルフルに歌い上げるタイトル・チューン「ア・ストーンズ・スロウ・アウェイ(原題:A Stone’s Throw Away)」では一聴して彼と分かるローウェル・ジョージの浮遊感のあるスライドギターが聴ける。続く「カウボーイ・エンジェル(原題:Cowboy Angel)」はローウェルとヴァレリーの共作曲。ジョン・セバスチャンのハーモニカも陶酔を誘う。そして、「シティ・ライツ(原題:City Lights)」はモーリス・ホワイト、ヴァーディン・ホワイト、フレッド・ホワイト、ラリー・ダン、アル・マッケイらアース・ウィンド&ファイヤー組がバックをつとめる異色のセット。彼らはヴァレリーが本作以前に組んでいたバンド(ハウディ・ムーン)のバンドメイトで、アース〜に楽曲提供をしていたジョン・リンドの呼びかけで参加したのだろう。エンディングの「バック・トゥ・ブルー・サム・モア(原題:Back to Blue Some More)」は再びローウェル、ヴァレリー、そしてビル・ペインの共作曲で、しっとりとジャージーに歌い上げる。全9曲、33分という良い尺だ。
よく練られた楽曲、アレンジもあって、何度聴いても非の打ち所のない出来栄えに感嘆してしまう。なんと言ってもヴァレリーの歌のうまさが光る。何の資料もなく、ジャケット写真だけ見たならば、そりゃカワイ子ちゃん路線で宣伝してみるかとなろうが、歌、音を聴けばこれは見栄えで売るアルバムではない。バックコーラスもほぼヴァレリー自身が担当していると思われるが、さすが専門職らしく、うまい! ところが、これだけ歌えていながら、彼女はフロントに立つよりも、誰かのバックでコーラスをつけるほうが自分にはふさわしいと考える人だった。実際に、控えめな性格で、実はステージ恐怖症だったという証言もある。