タイタニックの
沈没事故から歌が生まれ、
ポピュラー音楽の側面が見えてくる

民衆が好んだのは
「悲劇」や「災難」ばかり?

とりわけ「タイタニック」に代表されるように、災いに乗じて…という図式は、人権やモラル、社会通念にうるさくなった現代でこそ規制が働くようになったが、実はかつてはヒットの常套手段だった。海難事故、列車や自動車事故、台風や水害などの災害、そして極めつけは殺人。それが非情でおぞましい内容であればあるほど、格好の題材となった。極端な話、ストーマンたちの活躍した時代、いやそれ以前の音楽が民間伝承として歌い継がれている時代には、マーダー(Murder)・バラッド、災害(Disaster)・ソングが流行歌、人気曲としてもてはやされたのである。

どうしてこのような歌が必要だったのか? 私なりに推測してみるに〈他人のフリ見て我がフリ直せ〉という諺があるように、人々にあらゆる災い、愚かな行いを知らせることで、注意喚起、あるいは自戒、教訓の意味もあったのだろうか。なにせ、人間は日々間違いばかりしでかしているのだから。また、人の導きではどうにもならない成り行き、宿命に対し、もはや神に救いを求めるしかないと、信仰心を促す狙いもあったのかと考える。それがビジネスに結びついたわけである。

OKMusic編集部

全ての音楽情報がここに、ファンから評論家まで、誰もが「アーティスト」、「音楽」がもつ可能性を最大限に発信できる音楽情報メディアです。

新着