グラスゴー出身で
英フォーク・ロックを代表する
シンガーソングライター、
ラブ・ノークスを今再び

充実のアメリカ録音の2枚も
ノークスを知る必聴盤

おまけにノークスの希望だったのか、なんとナッシュビルでのレコーディングが実現するのだ。『レッド・パンプ・スペシャル(原題:Red Pump Special)』(’73)と題されたアルバムはこれまたセッションには名うてのスタジオミュージシャン集団のエリアコード615、メンフィス・ホーンズの面々が参加するという、クレジットを見ただけでおおーっと唸らされるラインナップ。仕上がりも上々だった。もう1枚、続く『ネヴァ・トゥー・レイト(原題:Never Too Late)』(’75)は西海岸に移動し、こちらにも盟友ジェリー・ラファティとジョー・イーガンのほかにベン・キース、アーティ・トラウムといった米国人のプレイヤーを招き、レコーディングが実現している。このワーナーの2作はこれまたニール・ヤングやゴードン・ライトフット、ジャニス・ジョプリン、他、数々の名作をものにしている名プロデューサー、エリオット・メイザーが担当している。日本で最も知られるノークスのアルバムと言えばこの2作だろう。私も最初、本コラムで『レッド・パンプ・スペシャル』を取り上げようと考えていた。過去に“名盤探検隊”のシリーズで日本で初CD化され、英国スワンプ・ロック(注1)の隠れ名盤的な扱いで紹介されていた。今でもラブ・ノークスと言えば、この2枚を思い浮かべる人が多いのではないか。アメリカ音楽に接近しながら、どうしようもなく英国らしい、曇り空を思わせるようなウェットな質感がそこかしこにある。いろんな人がそんな風に彼の音楽性を語っている。
※注1/スワンプ・ロック 米国南部のカントリーやブルース、R&Bの影響を感じさせるアーシーなサウンドを特徴としている。

これと言ったヒットに恵まれていないのに、ワーナーがノークスにチャンスを与えたというか、そこまで後押ししたのはなぜだったのだろう。過去の諸作にある楽曲のクオリティーが非常に高いこと、微妙にアメリカ指向の音楽性があること。パンク/ニューウェイブ・ムーブメントが起こる以前のシンガーソングライター、西海岸フォークロック、AOR路線などがチャートを賑わせるなど土壌は揃っているのだから、「あいつもそろそろブレークするんじゃないか」と期待したのかもしれない。過去の、特にプロデューサーに恵まれたところを見ると(5作目はテリー・メルチャー)、関係者間で彼の評判はことのほか良かったのではないか。しかし、このワーナーでの2作も当時はそれほど売れたわけではなく、というか酷な言い方をすれば、またしても不発だった。

OKMusic編集部

全ての音楽情報がここに、ファンから評論家まで、誰もが「アーティスト」、「音楽」がもつ可能性を最大限に発信できる音楽情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着