グラスゴー出身で
英フォーク・ロックを代表する
シンガーソングライター、
ラブ・ノークスを今再び
スコットランド・グラスゴーを
拠点に活動を始める
いつ頃から音楽を始めたのか定かではないが(たぶんティーンエイジャー)、1963年、19歳の時にロンドンに出て、しばらく昼は公務員、夜はフォーク系のクラブで演奏するという生活をしている。時まさにスウィンギング・ロンドン、ブリティッシュロックの勃興機と言うべき、とんでもない時期なのであり、その只中のロンドンで過ごしたわけだが、ビートルズ、ストーンズ、ザ・フー、キンクス…といったバンド熱に浮かされることはなかったのか? それらをやり過ごすことなど不可能だったと思うけれど、一番自分に合った居場所としてフォーク方面に歩を向けたというところが彼らしいというか。3年ほどロンドン暮らしを続けた後、あっさりグラスゴーにもどっている。そして、地元のクラブで根気よく演奏を続けるうちにソロデビューが決まり、アルバム『ドゥー・ユー・シー・ザ・ライツ』がリリーされたのだ。
きっかけになったのは、同郷のアーチー・フィッシャー(英トラッド界の重鎮。ソロの他、実妹らと組んだフィッシャー・ファミリーでもアルバムが出ている)とバーバラ・ディクソン(トラッドからポップスまで歌う実力派。女優としても活躍。ノークスとは彼が亡くなるまで交流があった)のデュオアルバム『スルー・ザ・リーセント・イヤーズ(原題:Thro' The Recent Years)』にノークスが3曲のオリジナルを提供したことだ。そのソングライティングの才にデッカレコードが注目し、フィッシャー、ディクソンに続き、ノークスのソロデビューを決定したわけだった。
ちなみにグラスゴーはエジンバラとならびスコットランドを代表する都市で、音楽が盛んな地域でもある。グラスゴー出身のアーティストと言えば、マーク・ノップラー(ダイヤーストレイツ)、プライマルスクリーム、エディ・リーダー(フェアグラウンド・アトラクションズ)、ベル&セバスチャン、モグワイ、意外なところでマルコム&アンガス・ヤング(AC/DCでメジャーシーンに登場するのはオーストラリアだが)、なんて人がいる。そしてドノヴァン、ペンタングルのバート・ヤンシュ、アーチー・フィッシャー、ジェリー・ラファティーがいる。ハイランド(ブリテン北部)の中心にあって、古くは伝統音楽(トラッド、フォークミュージック)が盛んだが、ルーツロック系、オルタナティブ、ポストロックとさまざまなバンドを輩出している。そんな多様な音楽を受け入れ、ミックスし、新たに発信しているところなど、ノークスの音楽性にも表れているような気がする。