〝美根〟

〝美根〟

【〝美根〟 インタビュー】
“誰もがそれぞれの
場所で戦っている”、
そんな気持ちで書いた

景色が浮かび上がってくるし、
風が吹いてくる

そんな「syrup」の次に新曲「この世界に」が発表されましたが、この曲は〝美根〟というアーティストそのものを歌っている曲に感じました。まずどう着手していったのでしょうか?

私はワンマンライヴに向けた準備をしていく中で思うことを曲にして、それを毎回ライヴの当日に披露しているのですが、2021年6月29日のワンマンで披露した新曲が「この世界に」の種となりました。大切な瞬間に見た景色は、自分だけが取り残されていくような気持ちの中で脳裏に焼きついて離れず、いつまでも覚えていて、それが自分を支えてくれるつながりになっています。夜の海で見た得体の知れない光、見上げた月、心に刻んだ景色をひとつずつ書き記していくところから始まりました。

〝美根〟さんはこれまでにも自分の決意を歌ってきたと思いますが、「この世界に」は音楽を続けていく上での決意であり、今の気持ちだけでなく、未来にもスポットが当たっている曲だと思います。ご自身ではどんなイメージを込めていたのでしょうか?

前半部分は強い気持ちが根底にあるのを前提に、景色を通して思う心の中のイメージです。後半は生きていくことの切ない不安も決意も全て引っくるめて、心に正直に、純度を高めるような言葉を意識しました。大きな世界にひとりぼっちで、どんどん内側の世界が無限に大きく広がっていって、力強く、気持ちの大きさを自分自身で再確認する、そんなイメージです。

DTMを使って作られた前半は寂しげで、鼓動や風が通り過ぎる音が入っていたりと、ひとりで立ち止まっているような空気感ができていると思います。後半は歌声とピアノが力強くなっていき、バンドサウンドに変わりますが、《ここに・・・・・ここにいる》の歌声も際立っていて、静かだったところに一気に大きな風が吹くような展開が素敵でした。

曲全体の構成は決まっていましたが、前半の部分を組み立てていく作業は、かなり悩み続けました。どこまでも積み上げて広げていけるけど、積み上げていった先が正解ではなく、思い描いていた世界の必要最低限の最高値を見つけないといけなかったからです。ピアノのアレンジも音数をシンプルかつ印象的にして、また特にポイントとなる心臓の音は何度も修正しました。その結果、とても解像度の高い世界になったと思います。

この曲の歌詞は決して“永遠に続いていく”という希望に満ちたものではないけれど、いつか終わりが来たとしても変わらない〝美根〟さんの想いを垣間見たように思えます。

私にとって生きていくことには必ず音楽と言葉がまとわり、もうそれが当たり前で、全身に癒着しています。でも、改めて《生きてゆくのさ》と歌わないと息をしていることが普通になりすぎて、限りなく死のグラデーションに近づいていってしまうような感覚にもなるんです。そういう感覚になる時は、いつもひとりです。ひとりで戦わなければいけない時に戦えなければ、支えさえも失ってしまう。この曲を聴いてくれた人が、改めてひとつ、戦う決意を抱けるようになれたらという想いを込めています。その戦いはとても小さくて地味なものかもしれません。でも、そこで挑むことが一番難しくて、尊いのではないかと思います。“誰もがそれぞれの場所で戦っている”、そんな気持ちで書きました。

また、この曲の歌声には強いからこそ時折脆さを感じる、痛みを知っているからこそ迫力が生まれるという、〝美根〟さんのアーティスト性が表現されているようにも思えました。歌唱面についてはいかがですか?

この歌詞の世界、本当に景色が浮かび上がってくるし、風が吹いてくるんです。見えてくる空間に正直に、それを届けられるように歌い、強さを意識しています。

「この世界に」は活動の節目に出す曲くらいの迫力がありますが、〝美根〟さんにとって今はどんな時期なのでしょうか?

正直言って、ここから始まるくらいの勢いです。私が世界に取り残されるくらい牛歩であることも理由ですが、側から見たら呆れられるくらいに、まだまだもっと大きくなれると思っていろんなステージを思い描いています。もっと多くの方に知ってもらいたいし、そのためには私から出会いに行かないといけないし、もっとやれることがたくさんあります。挑戦はやめないし、いつでも始めの一歩であり、この一歩より大きく次を踏み出せるよう試行錯誤していくつもりです。

2023年も下半期に突入しましたが、最後に今後の活動や意気込みについてをひと言お願いします。

12月3日(日)に東京・duo MUSIC EXCHANGEでワンマンライヴ『A Special Day of Mine 【焔心の砦】』があります。2023年唯一のワンマンです。応援してくれている方々の期待や想像を超えて、初めましての方々にもどっぷりとハマってもらって、その人にとっての一番になりたいです。必ず、思いきり楽しめるステージを魅せるので、ぜひ多くの方と出会えたらと思います。

取材:千々和香苗

配信シングル「この世界に」2023年7月15日リリース POWERPOP&Co.

ライヴ情報

『A Special Day of Mine 【焔心の砦】』
12/03(日) 東京・duo MUSIC EXCHANGE

■イープラスプレオーダー
7月22日(土)21:00〜8月13日(日)23:59
https://eplus.jp/mine/

〝美根〟 プロフィール

ミネ:オルタナティブ・シンガーソングライター。6歳の時にピアノで初めて作曲、11歳からはギターでの作曲も開始し、現在はピアノとギターを用いてライヴ活動中。2017年より“みねこ美根”名義で本格的に活動を開始し、22年4月に改名。その後も「零れる光」をはじめ、「本当は人魚」「この世界に」など配信シングルを精力的にリリースし、23年11月に待望の1stフルアルバム『焔心の砦』を発表。同年12月には東京・duo MUSIC EXCHANGEにてワンマンライヴ『A Special Day of Mine 【焔心の砦】』を開催する。〝美根〟オフィシャルSNS

「syrup」MV

OKMusic編集部

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