LUNA SEAが創る
サウンドの臨界点の、
さらなる先を顕した大傑作『STYLE』
LUNA SEAらしさと実験性が同居
加えて言うと、イントロでモノローグが入るところや、サビの後半でブレイク(《あぁ トキメキ を…》《あぁ セツナサ を…》の箇所)、もっと言えば、そのブレイクの背後ではクリアトーンのギターのアルペジオが鳴っているところなども実に彼ららしい。ある意味で“けれん”と言ってもいいサウンドメイキングであり、今聴いても実にカッコ良い。「END OF SORROW」がシングルリリースされた時の某音専誌のインタビューでSUGIZOは、“無理してキャッチーに作ったわけでもないし、シングルを想定して作ったわけでもないし、曲の出来上がり方からアレンジまで、何から何まで本当に自然の状態でできた”と振り返っていた。この発言からは、メンバー自身も同曲に自分たちらしさを感じていたことが分かると思う。
そうした今もLUNA SEAらしさを感じるもの──言ってしまえば、“LUNA SEAメソッド”のあるナンバーだけでなく、縦横無尽に各音を折り重ねている楽曲を収録しているのが本作『STYLE』でもあろう。オープニングであるM1「WITH LOVE」からそれが表れている。アナログレコードのノイズから始まるロッカバラードではあって、オールドスクールなナンバーだと思って聴いていくと、まったくその範疇に収まらない楽曲であることが徐々に分かってくる仕様。ドラムは淡々としているし、ベースは個性的なフレーズではあるものの、そこまで突飛な演奏ではないと思われるが、その上に乗るギターは奔放としか言いようがない。インダストリアル的なノイジーさを見せたと思えば、深めのディレイがかかった独特の残響音を出し、かと思えば、間奏のソロはアコギが鳴らされ、さらには時にバイオリンも聴こえてくる。しかも、その奔放の背後では、堅実なサイドギターのアルペジオが鳴っている。それでいて、テンポは緩めで歌もゆったりとしているので、艶めかしさも併せ持つという──これは最大級の賛辞として述べるが、何とも奇妙、奇怪なロックチューンである。
そのM1とタイプは異なるものの、M4「RA-SE-N」もまた奇妙、奇怪なナンバーと言えると思う。サビだけ抽出するといわゆるオルタナに思える。しかし、事はそう簡単ではないのがLUNA SEAのLUNA SEAたる所以だろう。イントロからそこに至るまでのリズムが単純ではないのである。5/4拍子。よくあるロックナンバー的な感覚で聴いていくと、どこか“つんのめる”感覚があって、この楽曲がこの先どうなっていくのかと微妙に不安を覚えるような雰囲気すらある。後半では4/4拍子となり、開放感があるものの、ラストは再び5/4拍子となるので、不安感は拭えないままで楽曲は終わっていく。“「RA-SE-N」=螺旋”とは、実に上手いタイトルだと思う。1曲の中にしっかりとバンドが表現したかった世界観が広がっている。
M7「1999」もサウンドアプローチの実験性はM1に近いように思う。ほぼ全編を支配する性急ビートとサビのリフレインは、彼らがインディーズ時代からやってきたハードコアなサウンドを彷彿させるものだが、密集感だけに終始していないのは、当たり前のことながら、バンドの進化と深化を感じるところだろう。短い楽曲ながら、さまざまな音がそれとは分からないように散りばめられているようで、ヒップホップ的なアプローチもLUNA SEAというバンドに取り込まれるとこうなるという好例なのかもしれない。懐の深さが分かるM7でもある。
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