吉川晃司のソロ復帰への
意気込みを感じざるを得ない
アツきセルフプロデュース作品
『LUNATIC LION』
アルバムは
《俺はやるぜ ひとりでも》で始まる
この歌詞だけで『LUNATIC LION』は歴史に遺るロックアルバムと言っていいと思う。しかも、それだけで終わらないのが本作のさらに熱いところである。
《OK ばらしてやろうか こわしてやろうか/くだいてやろうか こわしてやろうか/くだいてやろうか ばらしてやろうか》(M2「LUNATIC LUNACY」)。
《誰のためにそこにいるのさ お前/むくわれない日々かみしめて/誰のために歌ってるのさ お前/届かないメッセージ 一人よがりで》《何のためにどうしてるかなんて/どうでもいいのさ 今が全て/ワイルドでゆこう》(M7「Weekend Shuffle」)。
《野生に目覚め/狂ったマーダレス/さえぎるもの全てを 殺して走る》《浮かれた時代は過ぎて/欠けてくマッドネス/もっと危ない予感 犯して走れ》(M9「Barbarian (LUNA MARIA)」)。
《俺は眠らないぜ》《Oh! もっと 引き寄せてくれ/Oh! もっと 感じさせてくれ》《焼けつく太陽じゃ/素直になりすぎて/Dr.ジキルも ハイドになれない 夜明けはいらない》(M11「Virgin Moon〜月光浴」)。
M2のサビやM9辺りは筆者が深読みして熱くなっていることは承知だが、本作の制作背景に思いを馳せると、思わず深読みしてしまうこともご理解いただきたい。事の経緯を改めて説明すると、本作『LUNATIC LION』は、吉川晃司が布袋寅泰との音楽ユニット、COMPLEXの活動休止後に発表された最初のアルバムである。COMPLEXがどういうユニットであったかを改めて語る必要はないだろう。もし、よく知らないという人がいて、この機会に知りたいというのであれば、2019年4月に当コラムでアルバム『COMPLEX』を紹介しているので、そちらをご参照いただきたい。読み返してみたら、これもかなり熱い文章となっていたことは汗顔の至りではあるけれども、その熱さもまた、それだけCOMPLEXの存在感が大きかったこととご理解願えれば幸いである。ファン、関係者だけでなく、おそらく当人たちにとっても尋常でないほどに期待値の高いユニットであったし、実際、COMPLEXはデビュー後、音楽シーン全体に大きな話題を振りまいた。
しかしながら、“両雄並び立たず”の成句の通り、表立った活動はほぼ2年間のみで、あっと言う間に散ってしまったユニットである(2011年7月30日、31日に一度だけ再結成)。[音楽性の根本的な違いが生じたことも休止の要因と言われている]が、吉川がCOMPLEX結成を決意した理由は[ロックバンドという活動形態に魅力を感じ、それを通して「自分のコンプレックスそのものである洋楽に匹敵するスケールの大きい音楽」を採算度外視で作る]ことだったらしいので、それが事実であるとすれば、2年間のバンド活動というのはどう考えても短過ぎたとは思う。活動休止した時、2人からは“一緒にやらなきゃよかった”といった後悔の言葉も漏れていたようではある。しかし、バンドという表現を手放したことに対して、吉川にはそれなりに忸怩たる思いがあったことは想像するに難くない。悲哀もあっただろう。そう考えると、《俺はやるぜ ひとりでも》で始まり、《俺は眠らないぜ》で終わる『LUNATIC LION』の歌詞には、吉川晃司の並々ならぬ決意を感じざるを得ないのである(ここまでの[]は全てWikipediaからの引用)。