ウエストロード・ブルースバンドの『
BLUES POWER』は“ブルース=渋い”
の概念を打ち破る超クールでエッジー
なアルバム!

個人的な話から始まって申し訳ないが、ウエストロードブルースバンドは自分がライヴハウスに足を運ぶようになり、クラスの友達とバンドを組むキッカケとなった“原点”のバンドだ。小さい頃からピアノを習っていた友達がある日、“これ、カッコ良いから聴いてみなよ”と貸してくれたのが彼らのデビューアルバム『BLUES POWER』だった。ブルースがどんな音楽でどんな歴史があるのかなんて、まったく知識がなかったけれど、このアルバムの1曲目「Tramp」を聴いて鳥肌が立った。永井“ホトケ”隆の吐き捨てるような歌い方、トランプをシャッフルするような跳ねた16ビート、粋なギターのフレーズーー。今の言葉に置き換えると“なんてクールなんだ!”と思ったのではないかと思う。

全員がスタープレーヤーだったバンド

 ウエストロード・ブルースバンドは京都の同志社大学のサークル仲間が中心となって1972年に結成されたバンドだ。メンバーは永井“ホトケ”隆(Vo)、塩次伸二(Gu)、山岸潤史(Gu)、小堀正(Ba)、松本照夫(Dr)の5人。結成の年に彼らはブルースの神様、B. B.キングの大阪公演の前座(オープニングアクト)に起用され、その後、大阪、京都を中心に巻き起こったブルースムーヴメントを牽引する存在として活躍し、わずか3年後には現在の徳間ジャパンのレーベル、バーボンレコードからデビューを果たすことになる。わずかと書いたのは1970年代当時、バンドは数多く存在していても、デビューというハードルは今よりずっと高かったからだ。が、アルバム『BLUES POWER』をリリースした年には日本のジミ・ヘンドリックス的存在として熱い支持を受ける山岸潤史(現在はニューオーリンズで活動中)が脱退し、薩摩光二(sax)と井出隆一(piano)が加入、その後には山岸とはまったく違うタイプの今は亡き天才的ギタリスト、塩次伸二も脱退し、新たなギタリスト、中島正雄が加入するが、デビューから2年後の1977 年にウエストロード・ブルースバンドは解散することになる。当時、子供だった自分は残念ながらバンドの黄金期を生で見ることができず、解散したのちに永井隆と小堀正が結成したバンド、Blue Heavenのライヴに通いつめることになるのだが、大人になってからウエストロード・ブルースバンドが、いかにスーパーミュージシャンの集まりだったかということが理解できるようになった。スレンダーというか、ガリガリの身体(ホトケという愛称も歌っている時の喉仏のインパクトの強さから付いたと記憶している)からは想像もできないような声量で、魂に突き刺さってくる歌をうたう永井“ホトケ”隆、艶のあるエモーショナルなギターが絶品の塩次伸二、ダイナミックで熱情的なギターを響かせる山岸潤史、多彩なベースプレイをすべて指弾きでこなす小堀正、小気味いいシャープなドラミングでバンドを支える松本照夫。アルバムのジャケットから漂ってくる空気感も彼らに魅了された要素のひとつだったのだが、全員にフロントを張れるような存在感があり、当然のごとくそれは彼らの出す音にも反映されていた。

ウエストロードのブルースのはかりしれ
ないパワー

 ウエストロード・ブルースバンドが活動していた1970年代、関西には才気あふれるブルースバンドやソロミュージシャンが活躍していた。憂歌団しかり、上田正樹とサウストゥサウスしかり、BREAK DOWN、ウィーピング•ハープ•セノウこと妹尾隆一郎しかり。雑誌にも“ブルースパワー”とか“ブルースブーム”の文字が踊り、関西のシーンを基軸にした特集が組まれ、日比谷野外音楽堂でのイベントや主に中央線沿線のライブハウスに彼らが出演する機会も増えた。みんな、それぞれにアクが強く、ソウル、ファンクを含むブラックミュージックの影響を強く受けていたが、その中でウエストロード・ブルースバンドはどんな存在だったかというと、独断と偏見と想像で言わせてもらえば、異色のバンドだったのではないかと思う。もしかしたら、京都というルーツが関係しているのかもしれないが、彼らの音楽には泥臭さとか暑苦しい要素というのがほとんどなく、エッジがあってどこか洗練されていたのだ。ブルース、R&Bの名曲を数多くカバーしていたこともあって、彼らやローリングストーンズのおかげでB.B.キングやアルバート・キング、マディ・ウォーターズ、サム・クック、オーティス・レディングなども聴くようになったのだが、ウエストロードの放つ匂いはやはり独特だった。それから月日は流れ、永井隆のヴォーカルを改めて聴いた時、ドアーズのジム・モリソンを思い出した。声質が似ているとか、歌い方が似ているとかではなく、瞬発力や間合いを見事にとらえたシャウト、張り詰めたテンション感に共通点を見出したのかもしれないが、その時から自分の中でウエストロード・ブルースバンドは勝手にロックのカテゴリーの中に入れさせてもらった。や、ホントに言いたいのはジャンルなんてことじゃない。彼らはブルースとかロックとか(そもそもブルースはロックンロールの親のような存在でもあるが)、そういう分け方をして通りすぎるには、あまりにもったいないバンドだということだけだ。今回、原稿を書かせてもらうことになって、改めて曲を聴いたら、あの頃と同じように鳥肌が立った。ブルース好きのみならず、パンク好きな人にもオルタナティブロック好きな人にも、この衝動性と表現力はきっとダイレクトに伝わると思う。“BLUES POWER”というタイトルを超越するエナジーをぜひ体感してほしい。

アルバム『BLUES POWER』

T-Bone Walkerのカバー「TRAMP」に始まり、B.B.キングやバディ・ガイ、エルモア・ジェームスなどブルースの名曲のカバーで構成されている。楽器陣全員が音楽で会話しているような素晴らしい演奏は聴きどころだらけと言っていい。超エモーショナルでブルージーなギターがヴォーカルに絡みつく「It’s My Own Falt」は英詩の中に突如、“三条河原町”“京都銀閣寺”というフレーズが飛び出すセンスが“クール”のひと言。永井“ホトケ”隆のシャウトとビブラートのすごさにぶっ飛ぶ「First Time I Met The Blues」はギターの破壊力とともに楽しんでほしいナンバー。ゲスト陣も豪華で「I’ll Drown In My Own Tears」には金子マリが、「Ain’t Nobody’s Business If I Do」には妹尾隆一郎がブルースハープで参加している。ラストナンバー「Blues After Hours」のみ日本語詞。スタジオレコーディングでこの熱量、臨場感をパッケージしていること自体、驚異のアルバムである。

著者:山本弘子

OKMusic編集部

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