白田一秀をはじめ、
HR/HMシーンの強者たちが集った
GRAND SLAMの
『RHYTHMIC NOISE』のインパクト
白田一秀という不世出のギタリスト
《LOOK AT ME DON'T BE LOOKIN' /DOWN BABY/終わった訳じゃないさ/傷だらけのYOUR HEART/俺達も同じ/ふさぎこんでいても/夢は遠ざかるだけ/上を見るのさHEY BOY/始めるのは今》《あこがれだけじゃ、やり切れない/その手につかむまで/OVER & OVER AGAIN》(M4「WITHOUT DREAMS」)。
《PARADICE! OH PARADICE!/すぐそこに 見えているのは OH-HERE IS/PARADICE! OH PARADICE!/くすぶってちゃ 何も始まらない/OH-HERE IS PARADICE!》《誰にも止められないさ 俺達の思いは/そびえ立つ高い壁を 叩き壊せ 今すぐ》(M6「HELLO」)。
恋愛もの──というよりも、激しい求愛を描いた歌詞もある中、上記のような上昇志向というか、ブレイクスルーを歌った歌詞が目立つ『RHYTHMIC NOISE』でもある。その背景には、バンド結成やデビューする過程においてメンバーの思い通りにならないことがあまりにも多かったという話があったと聞いたが、恨みがましくも、湿っぽくも聴かせていないのは、メロディーもさることながら、加藤の歌声のクリアーさによるのだと考えていいのではと思う。
最後に白田のギターについて語ってみよう。時期的にVan Halen辺りのからの影響が若干色濃いように感じるものの(M6「HELLO」やM8「NO!NO!NO!~SHOCK YOU~」)、先ほど変幻自在と書いた通り、ストローク、アルペジオと器用にこなしつつ、ギターリフもギターソロも個性的なプレイを聴かせてくれるギタリストだ。M9「TELL ME」ではアコギも操っている。ギターリフは楽曲全体を象徴するようでありながら(楽曲のタイプに沿った…という言い方もできるかもしれない)、しっかりとそこに彼らしさを放り込んでいるのが特徴だろうか。M3「SPEND THE NIGHT」とM10「COOKIES」との比較が分かりやすいように思う。M3はブルースフィーリングがあり、M10「COOKIES」は疾走感かつワイルドさがある。ともに口でコピーできそうなほどにポップというのも特徴であろう。ギターのメロディーが歌のキャッチーさと双璧をなしているのは、ギタリストとしての面目躍如というところかもしれない。ギターソロはどの楽曲もリフ以上に個性的。M9「TELL ME」の間奏やM4「WITHOUT DREAMS」のアウトロなどでは、いわゆる泣きのメロディーもあるにはあるが、それ以外の間奏はそれとは異なる。メロディアスではない…という言い方が適切かどうか分からないけれど、他のバンドではなかなか聴くことができない、ひと味もふた味も違う独自のプレイなのである。ギターリフは口でコピーできそうと書いたが、その観点では、ソロは簡単に耳コピできるような代物ではないと思う。ニュアンスも独特なら、展開も(初見では)予測不能だ。速弾きも多く、聴き手にピリッとした緊張感を与えてくれる。とにかくさまざまなシーンで、白田一秀が不世出のギタリストであることを示す音像が満載なのである。
TEXT:帆苅智之